セミナー

【レポート】人間塾2021年度オンライン読書討論会

2021年5月10日

人間塾 第9期生 髙木菜夏
(武蔵野音楽大学3年)

人間塾では例年、ゴールデンウィークの期間を使って香川県の小豆島でお遍路研修を行っておりました。しかし昨年度に引き続き、今年度もコロナ禍の情勢を鑑みて、その研修は中止となってしまいました。このお遍路研修は、新塾生が入塾した直後ということもあり、塾生がお互いを知り合う重要な機会でした。そのため、何もできずに終わってしまうのは大変心苦しいという塾長や壺井さんのご意向で、新しい形の研修会を開催していただきました。

初日である5月2日はZOOMにて、カレル・チャペックの戯曲『白い病』を題材に討論会が行われました。

人間塾2021年度ヤングセミナー:課題図書の『白い病』

課題図書の『白い病』

『白い病』は戦争によって栄える軍事国家を舞台に、大理石のような白い斑点が体に発症した人は必ず死にいたる、という疫病が流行する物語です。病の特効薬を発見した町医者ガレーンは、血清の提供と引き換えに戦争をやめることを国に要求します。最終的に権力者らはガレーンの要求に応じますが、戦争を賛美する市民は政府の意向に反発します。そして物語は、薬を届けるべく権力者の元へ向かうガレーンが群集の暴行を受け死に至ります。またガレーンが手にしていた薬も群衆によって踏み潰されて、物語は終わりを迎えます。

塾生には一人3分の持ち時間が与えられ、「この本を読んで何を感じ、あなたならどうするのか。国家としての決断とは何か。」という問いかけに対して、各々に発表を行いました。

発表の中で、「私がガレーンの立場であったら、国家に対して一人で声をあげることはあまりに無力であると感じた。しかしそれでも私に何ができるかを模索していきたい。」という意見を述べた塾生がいました。塾長はその塾生に対し、一人では無力であると気づくことができたのならば、味方を見つけ、自分は一人ではない、仲間がいるということに気づくべきであると仰いました。

またある塾生は、物語の登場人物それぞれに名前が与えられているが、国の権力者である「元帥」には固有の名前がない点を分析しました。そして、「彼のような国民を先導する存在は必要であったが、彼は代役可能な存在だった。」と考察を述べました。その塾生の発表によって、国家は為政者の意見によって動いているのではなく、その人物を国家元首たらしめているのは国民の思いであり、結局、国は国民によって動かされているのだと気づきました。この物語の中でガレーンが平和を希求する相手は元帥ら権力者ではなく、民衆一人一人だったのです。権力者たちから同意を得たにもかかわらず、民衆に襲われてしまったガレーンの姿はまさにその象徴のように描かれています。

今回の討論会ではこの他にもさまざまな意見が活発に交わされました。同じキャラクターの同じセリフを取り上げても、塾生によって捉え方が異なっていたいため、読み方の違いにそれぞれの生きてきた人生や価値観が反映されていて、多様性というものが顕著に感じられました。

また、「本を読むときは、筆者のメッセージを文章だけでなく時代背景からも考察したほうがいい。表層的な言葉の意味だけでなく、深層的な意味を知ることでより面白みが出てくる」いう塾長からのアドヴァイスに、読書をするということの豊かさを教えていただいた1日でした。

人間塾2021年度ヤングセミナー:よく学び、よく笑います
よく学び、よく笑います


塾長のそれでええやん!

塾長・仲野好重が日々を綴った連載
※連載は一旦終了しました。