セミナー

【レポート】人間塾2020年度・新国立劇場での鑑賞研修

2020年12月15日

人間塾 第9期生 今村秀一朗
(慶應義塾大学3年)

2020年12月5日、新国立劇場にて、オペレッタ「こうもり」を鑑賞しました。私は今までにオペラを鑑賞したことがなく、入塾時からとても楽しみにしていました。同時に、オペラやオペレッタといえば格調高い印象がありましたので、果たして自分に理解できるのだろうか、という不安もありました。しかし、幕が開くとすぐに、その心配は吹き飛びました。

まず心を打たれたのは、音楽性の高さです。迫力あるオーケストラと、リズミカルに舞台を駆けまわる演者の方々の歌声が絶妙に合わさっていました。今回の演目は喜劇でしたが、観て楽しいだけでなく、聴いて心地よい舞台でした。また、外国の演者の方々が、片言の日本語でユニークな表現をされる場面があり、その都度会場は笑いに包まれていました。例えば「SHO-CHU DAISUKI(焼酎大好き)!」などのセリフがあり、所々で日本らしさが組み込まれていました。こうした工夫があったことで、物語を少し身近に感じることができました。

人間塾2020年度・新国立劇場での鑑賞研修:幕間のひととき
幕間のひととき


さて、物語は、主人公アイゼンシュタインが友人から誘われた貴族の夜会に出席するため、妻ロザリンデに嘘をつく場面から始まりました。男女について描く作品ではありましたが、内容としては「愛」について深く考える、といった哲学的なものではなく、むしろありのままのストーリーやオーケストラを気軽に楽しむことができるように構成されていたと思います。そもそも、オペレッタ「こうもり」が生まれた時代背景として、当時のウィーンではコレラが流行し、それに伴う不況もおきていたという事実があります。この作品には、そんな世界だからこそ、せめてオペラ会場では心から劇を楽しんで欲しい、という思いが込められているのかもしれません。だからこそ、現実を忘れて見惚れるほどに豪華で、そして愉快な作品に仕上がっているのだろうと感じました。

「こうもり」が生み出された当時のウィーンは、現在の世界情勢と似ているような気がします。テレビをつければ、新型コロナウイルス関連の暗いニュースばかりです。街ゆく人はみなマスクをして、その表情を確かめることさえ困難な世の中です。もちろん、このような現実から目を背けてはいけないのですが、今回の「こうもり」を鑑賞する一刻だけは、観客に心から楽しんで欲しい、という企画者の方々の思いを感じることができました。私も、社会に生きる一人の人間として、何処かの誰かの幸せな生活を少しでも支えることができる人間になりたい、と感じました。

人間塾2020年度・新国立劇場での鑑賞研修:オペラ鑑賞後、ポスターの前で
オペラ鑑賞後、ポスターの前で




塾長のそれでええやん!

塾長・仲野好重が日々を綴った連載
※連載は一旦終了しました。