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セミナー

【レポート】人間塾2018年度第12回ヤングセミナー

2018年11月2日

人間塾 第6期生 神薗峻也
(多摩美術大学4年)

去る10月25日に第12回人間塾ヤングセミナーが行われました。セミナーが始まる前、日頃お世話になっている塾長に、感謝の気持ちを込めて誕生日のサプライズを行いました。人間塾がなければ、塾長との出会いがなければ得ることのなかったものが多くあります。与えられているものを再度噛み締めながら、セミナーへ臨みました。

今回はセミナーに、人間塾の活動助成を受けているNPO法人日本教育再興連盟つぼみプロジェクトの皆さんが来塾されました。つぼみプロジェクトは、福島県南相馬市の小中学生を対象に、東京での社会科見学を行う「東京スタディーツアー」を中心に活動している団体です。セミナーの最初の時間を使い、活動報告が行われました。報告を聞き、学びの場が少なくなっている被災地の子どもたちの存在を知りました。子どもたちに将来の幅広い選択肢を与える活動を行っていること、被災地の状況をできる限り明るい方向へ引っ張っていこうとする姿勢に感動しました。

人間塾2018年度ヤングセミナー:つぼみプロジェクトのお話

つぼみプロジェクトのお話

続いて、塾長によるセミナーが始まりました。冒頭、塾長からの「君は燃えていますか?」という問いかけが全員に投げかけられました。塾生はそれぞれの心境を振り返るなか、塾長はドイツ系ユダヤ人であるハンナ・アーレントについてお話を始められました。

アーレントは1906年にドイツのハノーファーで生まれ、1969年に心臓発作で亡くなりましたが、哲学者として大きな足跡を残した人物です。彼女が生きた時代は、ナチスによる全体主義がドイツに蔓延し、同時に、第二次世界大戦が勃発した時代でもありました。ナチスといえば、ユダヤ人の迫害を行ったことでも知られています。そこで塾長は、なぜ当時のドイツに反ユダヤ人主義が起きたか、その経緯を話されました。ユダヤ人に対する憎悪は残念ながら昔から存在していたことや、イエス・キリストをユダヤ人が磔刑に処したという歴史にも、非ユダヤ人たちがユダヤ人に対して複雑な思いを抱く結果になったのではないかという考察でした。

ユダヤの人々は、ローマ帝国により住んでいた場所から追放され、自らの国を持たなくなったあと、流浪の民になってしまいます。再び国を持つことを夢見て「シオニズム」と呼ばれる祖国復興運動を興し、世界中に散在している仲間たちと活動を続けてきました。大恐慌が起きた際、多くの人々はその経済不安の原因をユダヤ人のせいにし、憎みました。ヨーロッパを中心に発生したさまざまな社会問題と経済問題を前に、反ユダヤ主義の雰囲気が高まっていきます。そのような人々の心理状態と社会現象をうまく利用した人物がヒトラーであったのです。ヒトラーは、常に民衆をあおり、ユダヤ人を迫害したくなるような状況を作っていきました。

人間塾2018年度ヤングセミナー:心を燃やしていますか?

心を燃やしていますか?

アーレントは、このような歴史的流れを考察し、「全体主義」とは思考することを止めた人々の中に蔓延すると考えました。彼女はそのような人々を「大衆」と呼び、互いに自立した考えを持ち、議論し合い、国家の真の豊かさのために協力する意思を持っている人々を「市民」と呼びました。当時の大衆は反ユダヤ主義を受容し、自分で考えるのではなく、ヒトラーのような強硬なそして極端な考え方を持つリーダーにすがってしまったのだと塾長は話されました。

その実例として、強制収容所や絶滅収容所への移送責任者であったナチス親衛隊の幹部将校・アイヒマンを挙げられました。彼は自分の行ったことを悪いこととは思っておらず、アイヒマン自身は「私はただ法律に従っただけだ」と、イスラエルでの裁判で語ったそうです。とは言え、アイヒマンは残酷でユダヤ人を人一倍憎んでいた人物であったかというと、アーレントは「全く平凡で、普通のどこにでもいるような人物であり、ユダヤ人への憎悪の感情は持ち合わせていなかった」と語っています。しかし、アイヒマンの行為がなぜ問題かというと、自らの善悪の判断を放棄し、ナチスやヒトラーの考え方が最高のもの、最善のものであると思い込んでしまったからなのです。塾長は、現代社会は暴力に訴えない全体主義が静かに忍び寄っている状況だと、警告しています。そして、私たちに「人生は悩んで当たり前なのだ。逃げずに考えなさい。考えることから逃げてはいけません」とメッセージを送っています。私たちは単なる「大衆」になってはいけないのだと、理解しました。