ヤングセミナー

【レポート】人間塾2022年度読書会

2022年9月5日

2022年8月25日に夏休み恒例の読書会を開催しました。
課題図書は、遠藤周作氏の『深い河』でした。様々な感想や意見が交わされ、大変白熱した読書会となりました。

今回のレポーターは、第9期生の山本天智です。
是非ご一読ください。

塾長・仲野好重

人間塾 第9期生 山本天智
(国際医療福祉大学4年)

去る8月25日、夏季恒例の読書会が開催されました。今年の読書課題は遠藤周作の『深い河』でした。この作品は5人の登場人物がそれぞれの人生で何かを求めてインド・ガンジス河に向かい、その旅の中で各々の思いが描かれていく物語です。

この日のために物語を読み込んできた塾生たちからは、「日本的なキリスト教の在り方を問うているように感じた」「特定の宗教を超えた、次元の異なる宗教性について綴られた物語」などというような感想が出てきました。塾生からの感想に多く出てきたように、この『深い河』は宗教の普遍性を感じさせる物語です。それは物心ついたときからキリスト教の環境の中で育った遠藤自身の葛藤や、日本人としてのキリスト教観、さらには宗教の垣根を超えた「神」に対する晩年の遠藤の考え方が込められていると仲野塾長が教えて下さいました。

人間塾2022年度ヤングセミナー:読書会の様子

読書会の様子

読書会の中で塾長は私たちに「印象に残った登場人物はだれか」と尋ねられました。物語には主要な登場人物の他にも、メッセージを内包した人物が多く登場しており、塾生が思い思いに登場人物を挙げていきました。今回は中でも「美津子」に大きくスポットが当てられました。

「美津子」という人物は、学生時代から経済的にも余裕があり、卒業後も「無難な」人物と結婚し安泰な生活を送るも、何か人生に欠けているものを感じ、満たされない人生を送ってきた女性です。彼女は学生時代、大津という素朴なクリスチャンの学生に出会います。大津はのちに神学生になるのですが、自分にはない信念を持った生き方をする彼に何か惹きつけられた美津子は、人生の様々な局面で大津を追いかけ、遂にはガンジス河にたどり着くのです。

美津子について塾生からは、「生きる意味が分からず、人生に右往左往する人物」や「心の奥底では本当の愛を探し求めている人物」といったような意見が出ました。議論は進み私たちは「美津子が人生を通して探していたものは何か」という問いに至りました。ここでも様々な意見が飛び交いましたが、結局美津子は「本当の愛」を探していたのではないかと、一つの結論に至りました。

人間塾2022年度ヤングセミナー:考えを深め合う

考えを深め合う

そこで塾長から本当の「愛」とは、「無条件」なもので、それには「意志」が必要であること。好かれること・嫌われることとは異なるものであると、お話しいただきました。さらに物語に出てきた「玉ねぎ」とは遠藤によると「愛の働き」であり、私たちはそれぞれが「玉ねぎ」をもっているのではないか。この玉ねぎの働きは特定の宗教に限定されない普遍的なものなのではないか、というお話を頂いたところで今回の読書会は終了となりました。

今回の読書会は、気が付けば2時間以上経過しているという大変白熱した会となりました。それでもまだまだ話したいことはたくさん残っており、改めて遠藤周作の『深い河』のテーマの豊かさ、物語の奥深さに気づかされました。また、他者と意見を述べ合うことで、一人で読むだけでは得られない考え方や物の見方を知ることができ、とても充実した会でした。

今後もじっくりと一冊に向き合い、時には他者と議論をするような読書をしていきたいと感じました。来年の読書会が今から楽しみです。



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