ヤングセミナー
【レポート】人間塾2025年度第10回ヤングセミナー
2025年8月18日
2025年8月7日に開催したヤングセミナーは、夏休み前の最後のセミナーでした。塾生たちは課題図書を与えられ、読書にいそしむ夏休みになることでしょう。この日のセミナーでは、13期生の中島継人君が、先日行われたカレッジを欠席したため、この日に講義を行ってくれました。柔道についての講義で、なかなか興味深い話でした。また私からは、塾生たちの夏休みの過ごし方について思いを伝えました。
今回のレポーターは第14期生の森瑛一郎です。是非ご一読ください。
塾長・仲野好重
人間塾第14期生 森瑛一郎
(慶應義塾大学4年)
去る8月7日、第10回ヤングセミナーが開催されました。今回が夏休み前最後のセミナーだったため、塾生たちは皆、気を引き締めて臨みました。
セミナーの前半では、先日行われた人間塾カレッジに参加できなかった13期の中島継人さんが「柔の道 judo ~嘉納治五郎の物語~」と題して講義を行いました。柔道の創始者・嘉納治五郎の歩みを振り返り、理想の武道を築くために様々な流派を学んだことを紹介しました。特に重視していた概念が「精力善用」と「自他共栄」の二つで、中島さんは習っている書道を活かし、墨で書いた文字を示しながら説明しました。
また嘉納治五郎は教育者としての一面も持ち、柔道の聖地である講道館や、人間教育を行う嘉納塾を設立したそうです。そして国際オリンピック委員として世界的に活躍し、日本の知名度向上に大きく貢献したと言われています。質疑応答では、中島さんによる柔道技の実演もあり、会場は大いに盛り上がりました。
後半では、仲野塾長が、夏休み中に意識するべきことについて話してくださいました。塾生は夏休みの課題図書として、エーリッヒ・フロムが書いた「愛するということ」もしくは「生きるということ」を読むことになっています。フロムはドイツ出身のユダヤ人で、アメリカに亡命後も、ドイツ人へのメッセージを発信し続けました。ドイツはかつて帝国主義で失敗を繰り返し、自由主義に転換した時期がありました。しかし、帝国主義時代のように、今まで国(統治者)の命令の通りに行動すればよかった国民が急に解放されると、自分自身で生活をやりくりし、その責任を自分で負わなければならなくなります。そのような自己責任が大変重く感じられ、せっかく手にした自由からも、人々は逃げ出したくなります。
そして同時に、圧倒的なカリスマ性をもつ指導者を求めるようになり、その時に現れたのがアドルフ・ヒトラーでした。フロムはこのような状況を「自由からの逃走」という本にまとめ、世に訴えたのです。このような鋭い視点を持つフロムの著作は、一度読んだだけでは理解しきれないと思います。仲野塾長は、課題図書を繰り返し読み、咀嚼していってほしいとお話しになりました。
さらに塾長から、「人間塾の活動が休みの間、塾生として何ができていて、何ができていないのか、今後どのような意識で活動に取り組んでいくのか、きちんと整理してほしい」というお言葉がありました。私は入塾してまだ4か月ですが、普段のセミナーや塾長面談を通して、多くのことを学ばせていただいています。今後どう生きていくべきか全く分からなかった私が、「恩送り」や「ネガティブ・ケイパビリティ」という考え方に触れ、驚きつつも徐々に腑に落ちていった感覚を今でも覚えています。
この4か月で自分ができるようになったことを一つ挙げるとするならば、「自分を認められるようになった」ことだと思います。以前は、答えのない問いに向き合う自分の努力の方向性が正しいのか不安で、周囲と比較して落ち込むこともありました。しかし、仲野塾長は面談でありのままの私を真っ直ぐに認めてくださり、私は人生で初めて自分自身を受け入れることができました。
夏休みの間に、まだできていないことや今後の意識を整理し、新たな気持ちで人間塾の活動に臨みたいと思います。




