ヤングセミナー

【レポート】人間塾2025年度 巡礼研修レポート 第三日目

2025年5月9日

2025年5月5日、江戸三十三観音巡りは最終日となりました。塾生たちは、おかげさまで皆元気に最終日を迎えることができました。20ヶ寺をお訪ねする中で、温かいおもてなしを頂戴したお寺や、お接待を用意して待っていてくださったお寺がたくさんありました。残念なことに中には観音巡礼を受け入れないお寺もあり(観音巡礼の札所として登録されているにもかかわらず)、心無い言葉をぶつけてこられる住職もおられました。しかし、塾生たちはたくましく、そして賢明です。これも人間社会の一つの現象と受け止め、ひたすらに歩き続けました。

今回のレポーターは、繊細な感性を持つ理系学生、第14期生の坂本周悟です。ぜひご一読ください。

塾長・仲野好重

人間塾第14期生 坂本周悟
横浜国立大学4年

5月5日、江戸三十三観音巡りはついに最終日を迎えました。

塾生たちの顔には疲れの色が浮かんでいましたが、各寺院でお接待くださったご住職の皆様、そして小豆島から応援してくださっている森下さんの思いを胸に、私たちは最後まで力強く進みました。

午前中は、宿泊地近くの傳通院、浅草の清水寺、両国の回向院の三ヵ寺を巡拝しました。回向院では、ペット供養の場で般若心経を唱えた直後、白い猫が静かに私たちのそばに現れました。その佇まいは、まるで私たちを見守っているかのようで、仏様に手を合わせる私たちに、仏様もまた寄り添い、力を与えてくださっているように感じました。

人間塾2025年度ヤングセミナー:力強いお祈り

力強いお祈り

午後は昼食後にさらに三ヵ寺を訪れました。大観音寺へ向かう途中、隅田川に架かる橋を渡る際、快晴の空のもと、陽光に照らされた川面がきらめき、その奥には東京スカイツリーが堂々とそびえていました。街の風景を眺めながら、この都市が多くの人々の営みによって形づくられてきたことを思い、自分の充足した生活もまた、誰かの支えの上に成り立っているのだと実感しました。寺院間の移動時間が長くなる場面もありましたが、その間には塾生同士で考えを語り合ったり、静かに思索に耽ったりすることができ、いずれも深い意味を持つ時間となりました。最後に訪れた心城院で唱えた般若心経には、これまでで最も力がこもっており、観音巡りがそれぞれにとってどれほど有意義なものであったかが感じ取れました。

三日間の観音巡りを通して、私は日本の伝統文化の奥深さと美しさを学びました。各寺院のご本尊や観音像にはそれぞれの個性があり、細部の装飾や空間の佇まいからも異なるメッセージが伝わってきました。その中でも共通して感じたのは、どの観音様にも「慈悲深さ」と同時に「力強さ」が宿っていたことです。仏教における「無」とは、欲や執着を手放し、心を空にすることだと説かれます。その状態こそが、人間本来が持つ慈悲や命への思いを、ありのままに表す基盤なのかもしれません。

人間塾2025年度ヤングセミナー:観音巡りを終えた塾生

観音巡りを終えた塾生

一方で、現代を生きる私たちは、日々の忙しさや社会のしがらみに囚われ、本来持っているはずの他者への慈しみや、生きることへの希望を見失っているようにも思います。現代の喧騒の中では、何を大切にするかが、人生の方向を大きく左右します。その中でも私は、自分の中にある「慈悲の心」「生への希望」を見失わずに生きていき、人を幸せにできる人間でありたいと強く思いました。

今回の観音巡りで、私たちを快く迎え入れてくださった各寺院の皆さまに、心より感謝申し上げます。これまで気づいていなかった日本文化の魅力に触れ、それを誇りに思えるようになったのは、長きにわたりこの文化を守り、受け継いできてくださったご住職方のおかげです。この巡礼で得た学びや気づきを大切にし、これから自分がどのように社会に貢献していけるのかを考えながら、精進してまいります。



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