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【レポート】人間塾2025年度 芸術鑑賞

2025年5月27日

2025年5月17日、北千住にあるシアター1010(センジュ)にて、国立劇場主催の文楽を鑑賞しました。

塾生が全員参加し、壺井専務理事と藤本理事にもご一緒していただき、古典芸能の世界を堪能いたしました。これは修了生である第10期生の福田真有さんが紹介してくださったお陰で実現した芸術鑑賞会でした。演目は、塾長も大好きな「俊寛」です。人形でありながら、人間以上に人間らしい表現の豊かさに、一同見惚れ、聞き惚れました。

レポーターは第14期の中村菫子です。ぜひご一読ください。

塾長・仲野好重

人間塾第14期生 中村菫子
(中央大学2年)

去る5月17日、北千住のシアター1010にて、文楽『平家女護島』の鬼界が島の段を鑑賞しました。今回の芸術鑑賞は、第10期生として人間塾を修了し、現在、国立劇場にお勤めの福田さんがご紹介してくださいました。塾生達はこの日を心待ちにしていました。

人間塾2025年度 芸術鑑賞:公演ポスター

公演ポスター

『平家女護島』は、俊寛僧都の悲劇を題材に、近松門左衛門が創作した作品です。平氏打倒に失敗した俊寛僧都と平判官康頼、丹波少将成経は流罪となり、三年間を絶海の孤島・鬼界が島で過ごします。互いの変わり果てた姿を哀れみつつも、成経と島娘の千鳥の結婚という嬉しい報せもあり、ささやかな祝宴を開きます。しかし幸せな時間は長く続きません。都から使いが来て罪を大赦する旨を伝えますが、船に乗り都に行けるのは俊寛ら三人のみで、千鳥は乗船を拒否されます。

加えて上使は都に残した俊寛の妻は平氏に殺されたのだと笑い、俊寛は呆然としたまま船に乗せられます。一人その場に残された千鳥は嘆き、成経と別れるならば死んでしまおうと決意します。その想いに心打たれた俊寛は、千鳥を自らの代わりに船に乗せるため千鳥の乗船を拒む上使と戦い、斬り殺してしまいます。そして、新たに罪を犯した以上、大赦は受けられないと俊寛は島に残ることを決めます。しかし未練や後悔は捨てられず、「おもいきっても凡夫心」と海の向こうに消えていく船に手を伸ばし、幕切れとなります。

文楽では、語り手である太夫、舞台音楽を担当する三味線、三人で一体の人形を動かす人形遣いの三業が一体となり、一つの芝居を創ります。何十年と鍛え上げられた技は素晴らしく、私はあっという間に劇中の世界に引き込まれました。特に三味線の舞台における役割が印象的でした。物語を盛り立てるように奏でられることもあれば、登場人物が涙を流す場面でポロンポロンと鳴り、涙が一粒ずつ溢れ落ちる様を表現していることもあります。私は中学時代に演劇を行っていた経験から、様々な音楽を用いなければ登場人物たちの心情や場面設定を伝え切ることはできないと考えていました。しかし文楽では殆ど一つの楽器で表しきっており、衝撃的でした。

人間塾2025年度 芸術鑑賞:鑑賞を終えて

鑑賞を終えて

鑑賞後、塾生達は口々に「楽しかった」と話し、それぞれの感想を共有していました。伝統芸能と呼ばれる種類の芸術は、演目の内容が「わかる」「わからない」といったように、まるで学問のように語られがちであると思います。しかし現代まで生き残ってきた文楽には、当時とはかけ離れた生活を送る私たちにも共感できる人間的な軸があり、心で楽しめる面白さがあるのだと改めて知ることができました。



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