ヤングセミナー
【レポート】人間塾2024年度第20回ヤングセミナー
2025年1月21日
皆様、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
過日、2025年1月9日にヤングセミナーを開催いたしました。新年早々、気の緩んだ塾生たちを前に、塾長は必死で覚醒させようと試みましたが、ほとんどの塾生たちは背筋を伸ばすことなく、その日は終わってしまいました。残念な気持ちが残るセミナーでした。昨今の学生全般に感じられることですが、世界情勢が大きく動いている現実を前に、それが自分たちの生活や将来に大きな影響を与えるという想像力の欠如が甚だしいです。このままで本当にいいのか。塾生だけではなく、私たち皆が考え行動しなくてはならない時に来ているように思います。
今回のレポーターは、第13期生の馬部壮太良です。
ご一読ください。
塾長・仲野好重
人間塾第13期生 馬部壮太良
(国際基督教大学 2年)
年が明け、2025年初回となる第20回ヤングセミナーが1月9日に開催されました。
セミナーで塾長はまず、年明けの出勤日に200件を超える退職代行サービスが利用されたというニュースについて話されました。
辞める時には、辞める時の礼儀作法があると説かれ、「自分自身の言葉で、堂々と対面して辞する大切さ」を話されました。退職代行サービスは、勤務先との衝突を避けたい若者にとって、会社を退職するために第三者に間に入ってもらう代行業です。昨今の若者の間での需要が増えており、塾長は私たちに人との関わり方、そして別れ方について警鐘を鳴らしました。
塾長が前職を退職した際、残された人々の間でも仕事が上手く回るようにあらかじめ手配をしたり、関係を持った方々全員と感謝を込めて別れの挨拶をしたそうです。その後、もう一度関わる機会に恵まれた時には、何のわだかまりもなく話すことができ、仕事でも助けて頂いたりと、退職後も良い関係を築くことが出来たそうです。つまり、別れ方、辞し方に大きなポイントがあるようです。
この退職代行サービスを題材にしたお話では、どんな相手であっても、自分の退職によって負担や迷惑をかけてしまう相手に、誠意を込めて退職の手続きをすることが大切なのだとわかりました。私はこの話から「立つ鳥跡を濁さず」という諺を連想しました。過去の自分の選択にけじめをつけることが、去る者の礼儀なのだと改めて感じました。
そして、塾長は冬休みの課題図書である『日本霊性論』に話題を移しました。私たち塾生の中には、恥ずかしいことですが、後回しにして読んでいない塾生もいました。仲野塾長は愕然とされながらも、塾生に向けて、『日本霊性論』を読み解く鍵となる「浄土真宗」について、解説してくださいました。
浄土真宗は親鸞が開祖であり、浄土真宗の元となる浄土宗は法然が開祖です。日本宗教の歴史では遣唐使が大きな役割を果たしています。その代表的な人物は、最澄と空海ですが、共に密教を学んで帰朝しました。当時の日本は、貴族を中心とした平安時代でした。その後、武士を中心とした鎌倉時代を迎え、人々の宗教観は大きく変化したそうです。
平安時代は争いが少なく、優雅で平和な御代が続きました。しかし、武士の台頭で鎌倉時代に入ると、武士たちは常に「生と死」の隣り合わせで生きなければなりません。そこで「生きるとは」「死ぬとは」を考え、自分の内面を見つめることが必然となり、武士の死生観に大きな影響を与える禅宗が栄えました。一方、農民などの庶民は識字率が低く、経典が読めないうえ、理窟の多い大陸伝来の仏教は受け入れることが困難でした。さらに、農民は年貢の徴収により、貧しく苦しい生活をしなくてはなりませんでした。
そのような背景の中、「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで極楽浄土に行けるという法然ならびに親鸞の念仏宗教が普及します。「南無阿弥陀仏」という言葉には、苦しいことや辛いことがあっても希望を捨てずに念仏をしていれば、極楽浄土に来ることができますよ、という阿弥陀如来の「本願」が込められています。 このように、鎌倉時代の社会背景や経済状態などが要因となって、日本独自の浄土真宗が成立していきました。
さらに、「日本霊性論」を読み解くキーワードとして、仏教学者である鈴木大拙を紹介していただきました。鈴木大拙は、特にアメリカで有名になった仏教学者です。流暢な英語を用いて、日本の禅文化を海外に紹介した偉大な人物です。大拙は浄土真宗にも造詣が深く、上述したように、平安時代から鎌倉時代への変遷の中で浄土仏教が発達したと述べています。
最後に、現在発展の著しいAIの翻訳についてお話しがありました。AIの限界点として、AIが翻訳した文章では、心に響く思いが伝わってこないことがあげられます。日本語で作成した文章に熱い思いが乗っていたとしても、AIがその文章をひとたび英語に翻訳すると、書き手の熱い思いが伝わらない文章になってしまう、と塾長はおっしゃいました。塾長はAIの文章が感動をもたらさないことを通して、塾生にはもっと本を読んでほしいと言われました。人間が作った文章に触れ、自分も心のこもった文章を、自分の力で作り出してほしいと塾長は願っているのだと、私は感じました。
今回のセミナーを通じて、現代において希薄になりつつある人との関わり方をもう一度考え直さなければならないと思いました。また、人の思いを汲み取れない傾向にある塾生が自分も含めて多いと思います。その塾生たちに、このままではいけない、変わらなくてはいけないと、塾長は必死に伝えていたと思います。
振り返ってみれば、私はあまりコミュニケーションが得意でなく、人との関わり方が希薄になっていることを実感しています。一人の人間として成長するために、人が発信する繊細なシグナルを感知する能力を高めていくことが、私の成長の鍵になると思います。今回のセミナーは、塾生の気の緩みと、人との関わり方の甘さが露呈したセミナーとなりました。現状を真摯に受け止め、これからひとつひとつ改善していくしかありません。これからも少しでも成長できるよう努力いたします。