ヤングセミナー
【レポート】人間塾2024年度第16回ヤングセミナー
2024年11月23日
去る2024年11月14日に、書家の髙橋珠翠先生に来塾いただき、今年度二回目の書道研修を行いました。今回も18時45分から21時まで2時間以上も先生はお教えくださいました。塾生たちは、ある程度書き上げる度に先生に見て頂くのですが、皆3回くらいは添削していただくチャンスを得たようです。先生はその間、全く休みなしのご指導です。本当に貴重でありがたい経験を塾生たちはさせて頂いております。
今回のレポーターは第13期生の上野城一郎です。
是非ご一読ください。
塾長・仲野好重
人間塾 第13期生 上野城一郎
(国際医療福祉大学 医学部 3年)
去る11月14日、今年度2回目となる書道研修が行われました。今回も、長年人間塾で指導していただいている髙橋珠翠先生をお迎えしました。
珠翠先生は、まず「なんでも好きな言葉を書いてくださいね」と、私たち塾生に優しく声をかけてくださいました。塾生たちは、前回の書道研修で珠翠先生からいただいた筆ペンを構え、各々が練習したい文字を熱心に書き始めました。自分の名前を練習する塾生や、年末に年賀状を書くことを見据えて「謹賀新年」とノートに書き連ねる塾生、自らの好きな言葉を書く塾生など様々でした。
私は、自分の名前を繰り返し練習し、特に「城一郎」という名前の一字である「城」を美しく書くことができるように努力しました。私の両親は、「悠然としていて、人生を自ら切り拓いていける人間になって欲しい」という願いを込めて、「城一郎」と名付けてくれました。私は、この名前をこれまで幾度となく書いてきました。しかし、「城」の字を筆ペンで書くと、字の「へん」と「つくり」のバランスを維持しながら書くことができず、全体として細く、弱々しい印象を与える字になってしまうことに気が付きました。そこで珠翠先生に添削をお願いし、名前のお手本を書いていただくと、その字は先生の朗らかなお人柄からは想像できないほど力強い字でした。私はそれに驚き、「どうしたら先生のように迫力のある綺麗な字を書くことができますか」とお尋ねしました。すると先生は、漢字の一画一画に注目して、一画ごとの線の太さや書き始めの位置などを、丁寧に詳しく教えてくださいました。珠翠先生の細部まで行き届いたご指導により、私は今までになく力強い「上野城一郎」を書くことができました。
さらに、珠翠先生は、届ける相手に合わせて字の書体を工夫しているとおっしゃいました。そのお話を伺い、私は書道の先生であった祖父から貰ったある書を思い出しました。祖父がくれた書には、自然体で純真な様を表す「天衣無縫」と、考えや行動が自由である様を表す「天馬行空」という二つの四字熟語が草書で記されていました。これは、当時がんの闘病中だった祖父が最後の作品として、私のために書いてくれたものでした。後に祖母から聞いた話では、祖父はこの書を揮毫するにあたり、この作品に最も合う書体をじっくりと考えたうえで草書を選んでいたそうです。私のことを思いながら祖父が書いてくれたこの書は、いつも私を勇気づけてくれています。
私たちが生きる現代では、コミュニケーションの道具として、紙と筆の代わりに様々な電子機器が台頭しています。そのため、自分で文字を書く機会は乏しくなりつつあります。そのような今だからこそ、私にとって今回の書道研修は、美しく、自分らしく、そして相手の事を思って字を書くことの大切さを再確認する貴重な経験となりました。
2024年も終わりが近づきつつあります。私はこの年末に、珠翠先生に教わったことを早速実践すべく、届ける相手の事を思いやりながら、年賀状を書いてみようと思います。読み手に私の想いが伝わるような、美しい文字を書けるように、これからも精進してまいります。