ヤングセミナー
【レポート】人間塾2024年度第14回ヤングセミナー
2024年10月22日
2024年10月17日にヤングセミナーを開催しました。このセミナーでは、私が尊敬する二人の人物を塾生たちに紹介しました。一人は評論家の立花隆氏、もう一人はドイツ人の修道女イサ・フェルメーレンです。この二人のエピソードを紹介しながら、「なぜ生きるのか」「どのように生きるのか」について、塾生たちと共に考えました。
今回のレポーターは、第13期生の大海心優です。
是非ご一読ください。
塾長・仲野好重
人間塾 第13期生 大海心優
(帝京大学医療技術学部2年)
去る10月17日、朝晩の風に秋の訪れを感じる中、第14回ヤングセミナーが行われました。
セミナーが始まる前に仲野塾長のお誕生日をお祝いしました。仲野塾長、お誕生日おめでとうございます!
今回のヤングセミナーでは、仲野塾長から「生きる」ということについて2人の人物を取り上げながらお話をしていただきました。
一人目は、生命科学、政治、宗教、宇宙科学などあらゆる分野に精通し、「知の巨人」といわれた評論家、立花隆さんです。立花さんの死後、彼の教え子たちは、立花さんが残した言葉を集めた書籍『いつか必ず死ぬのになぜ君は生きるのか』を出版しました。その本の中で、「人はなぜ生きるのか」(第3章)という問いがあり、立花さんはそれに対して「この世は生きる価値が無いなんてことはない」と述べています。
仲野塾長は「どう生きたら良いのか」という部分に着目し、「達成する為の何か、手に入れるための何か、つまりWHATではなく、どのようにそれをするのかのHOWを大切にしなさい」と教えてくださいました。
私はこの言葉が大変印象に残っています。日々の生活の中で、目に見える結果が全てという考え方をする人に多く出会いますが、私は、そこに至るまでの実際の過程、すなわち目に見えないものが大切であるということを強く実感しました。私は大学で、将来、臨床検査技師になるために医療技術を学んでいます。最近では、心電図やエコーについても勉強をしています。心電図やエコーを正しく読み取ることはもちろん大切ですが、検査に至るまでの患者さんに対する対応も大切にしていきたいと改めて思いました。
二人目は、ドイツ人の修道女イサ・フェルメーレンです。彼女は、仲野塾長が高齢者の心理的健康について研究をしている時に出逢われた方です。この方は、ナチスのダッハウ強制収容所からの生還者でもありました。
イサは、1918年にドイツ北部の都市リューベックで生まれ、弁護士の父とジャーナリストの母の元で育てられました。ドイツ国内でナチスが勢力を強めていく中で、イサの家族は反ナチスの考えを持っていました。彼女が中学生になると、北ドイツでもナチス勢力が激しくなったために、イサは母親と共にベルリンへ逃れることになりました。
そんな中、リューベックに残った弟のエリックは、イギリスのオックスフォード大学からローズ奨学金の奨学生に選ばれます。しかし、ナチスは、優秀な弟をヒトラー親衛隊に入れたいという理由で、彼にイギリスへのビザを発行しませんでした。
その上、パスポートまで剥奪してしまいます。そこで、イサは弟をイギリスへ亡命させるために手助けをします。それにより、彼はイギリスへの亡命に成功しましたが、姉をはじめとする家族が手助けしたことが発覚します。そして、イサは家族とともに強制収容所に収容されてしまいます。
長い収容所での生活から解放された後、イサは修道女になりました。そして、多くの人が、ナチスに賛同するような過ちを二度と犯して欲しくないという思いから、教育者への道に進みました。そして、イギリスへの亡命に成功した弟は、自分の母国ドイツと、自分の命を救ってくれたイギリスの二国に対する恩返しをしたいと常々考えていたようです。晩年のエリックは、「在英西ドイツ大使」として活躍しました。
私はこの二人の人物のお話を聞き、将来ただ臨床検査技師になるという目標を叶えるのではなく、「どのような」臨床検査技師として社会に貢献していくのかについて考えながら、今後生活していきたいと思いました。今の私は、患者さんの不安を和らげること、そして多くの人の命を救うことが、将来の職業を目指す理由になっています。私は自分が望む姿に少しでも近づけるよう、今、大学で出来る目の前のことに精一杯取り組まなくてはならないと強く思っています。