ヤングセミナー

【レポート】人間塾2023年度第16回ヤングセミナー

2023年12月8日

2023年11月30日、今年もあと1カ月になりましたので、この日のヤングセミナーは「クリスマス」に起きたある出来事を話しました。

それは、第一次世界大戦は始まって数カ月の1914年12月24日の出来事です。フランドル地方でにらみ合いを続けていたイギリス軍とドイツ軍の間で奇跡的な休戦が生まれました。その話を聞いた塾生たちは・・・。

今回のレポーターは第12期生の島田優です。
是非ご一読ください。

塾長・仲野好重

人間塾 第12期生 島田優
(中央大学3年)

去る11月30日、冷気が一段と深まり冬の訪れを感じる中、第16回ヤングセミナーが行われました。

今回のセミナーで、塾長は、2つの記事を題材にお話をしてくださいました。

1つ目の記事は、塾長が執筆した「クリスマス休戦」に関するものです。「クリスマス休戦」とは第1次世界大戦の中、クリスマスイブの夜、イギリス兵とドイツ兵が自然と休戦状態になった出来事です。そのきっかけとなったのが「きよしこの夜」という歌でした。ヨゼフ・モールによって作曲され、ヨーロッパ全土で愛されていたこの曲をドイツ兵が歌い始めると、塹壕からその様子を見ていたイギリス兵もつられて歌い始めました。その後、両軍の兵士が武器を持たず、塹壕から出てきたことによって、自発的休戦状態が生まれました。

この記事の最後には、「自発的休戦を行ったかつての兵士たちの心の中の良心を信じたい」「闘わないことを選ぶ勇気を信じたい」、という塾長の言葉がありました。私は、この兵士たちが持っていた良心こそ、現代を生きる私たちが失いかけているものではないかと思います。現代には、「自分さえ良ければそれでいい」「困っている人がいても自分には関係ない」という利己主義・自己中心主義の考えを持った人が多いように思います。しかし実際、私たちはどんなに些細なことであっても、何らかの形であらゆる人と繋がっています。戦争が行われている地域にいる人とも、どこかで必ず関係があるはずです。

塾長は、目の前のことのみを考えるようになれば、世界は分裂してしまうとお話しされました。それは、自己中心主義に陥ると、周囲に対する良心や共感性を失ってしまうからであると思います。クリスマス休戦の際の両国の兵士が持っていた、良心や勇気、そしてそれらの根底にある相手への共感が、世の中を良くしていくために現代人に必要なものであると思いました。

人間塾2023年度ヤングセミナー:資料に見入る塾生

資料に見入る塾生

2つ目の記事は、「AIとの未来を考える」というテーマのものです。その記事では、AIの知能が人間のそれを超える「シンギュラリティ」(技術的特異点)や今後AIが到達する発展性についての予測が書かれていました。確かな予測で高い実績を誇る未来学者のカーツワイル氏は、今後30年以内に「シンギュラリティ」が起こると予測しています。また、将来的には、AIを搭載したチップのようなものが頭に組み込まれる時代が訪れ、部分的にそれは既に起こっているとも話しています。

AIの登場は、私たちの生活に大きな影響を与えました。そして今後も進化を続け、AIは私たちの生活に更なる影響を与えるようになっていきます。AIチップが実用化されれば、思考の売買なども可能になり、これまでのような勉強をする必要がなくなる可能性さえあります。そのため、塾長は、AIとの未来を考えると、私たちは「どんな目的を持って何を学ぶのか」「何のために生きているのか」を考えて生きていく必要があるとお話しされました。また塾長は、人間は悩みながらも成長していくことでモラルが身につくとも言われました。

私たちは、様々な体験の中で、ときには悩み、自身と葛藤しながらも、それを克服することで道徳性を身に付けていきます。この道徳性や倫理観こそが、このAIとともに生きる未来ではより大切になってくると私は思います。なぜならば、たとえどんなにAIが便利なものであったとしても、その使い方を間違えてしまえば、様々な問題を引き起こしてしまうからです。その最たる例が今回のAIチップの実用化であると思います。

AIチップが大脳皮質に組み込まれると、人間の思考が皆同じになり、人から個性が失われてしまうという問題が起きる可能性もあります。私は、このAIの利用方法はモラルの観点からして、決して良いものだとは思えません。その背景には、やはり先程の「クリスマス休戦」でも話した、現代人の他人に対する配慮の欠如や、自身さえ良ければよいという利己主義的・自己中心主義的考えがあると思います。「自分だけ」という考えを捨て、嫌なことでも悩みながらそれを克服することが、今の現代人に必要であると、私は強く思いました。

今回のセミナーを通して、私は良心やモラルの重要性を改めて実感しました。クリスマス休戦を行っていた兵士たちが持っていた良心は、現代においては失われつつあるものになっています。しかし、良心がない人たちが、協力して生きていけるとは、私には思えません。

また、これからはAIに人間が今までしてきた仕事を奪われる時代になりそうです。私たちが、人間としての個性を保ちつつ、AIを正しく活かしてよりよい社会を創っていくために、大切なものは何か。それは、人と人が支えあい、より良い社会を創っていくための「良心」です。そして、その根底にある相手を思う気持ちを堅持して生きていかなければならないと思うセミナーでした。

人間塾2023年度ヤングセミナー:頂いたリンゴを手に
頂いたリンゴを手に




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