ヤングセミナー
【レポート】人間塾2023年度第13回ヤングセミナー
2023年10月17日
2023年10月12日に開催したヤングセミナーは、難民問題の専門家というべき緒方貞子さんのお話をいたしました。
世界の各地で紛争が止まない昨今、国連難民高等弁務官であった緒方さんが今もご存命であったならば、どのようにこの状況を受け止められたのか・・・。現場主義を貫かれた先人の生き方に、背筋が伸びる思いです。
今回のレポーターは第12期生の伊藤壮司です。
是非ご一読ください。
塾長・仲野好重
人間塾 第12期生 伊藤壮司
(千葉大学2年)
去る10月12日、気温も徐々に低くなり秋の訪れを感じる中、第13回ヤングセミナーが行われました。
今回のセミナーでは、国連難民高等弁務官であった緒方貞子さんの半生についてのビデオを視聴しました。緒方貞子さんは、1991年から2000年の10年間に亘り、日本人として初めて国連難民高等弁務官に就任した人物です。この長い任期の中で、彼女は世界各地で発生する難民問題の解決に向けて、たゆまぬ努力を続けました。
緒方さんは大学生の頃、学生会の会長として学生をまとめる役割を担うことになりました。そこで彼女は、反対意見に対して、会長としてどのようにまとめていけばよいのか悩みました。彼女の取った行動は、「まずは聞き役に徹すること。それからリーダーシップを発揮する」というものでした。反対意見を最初から否定するのではなく、しっかりと聞き、理解することで、彼女は反対意見を持つ学生との妥協点を探り、学生全体をまとめ上げていったのです。その指導力は、国連難民高等弁務官就任時にもいかんなく発揮されました。
また緒方さんは、国連の仕事に携わるようになって以来、あることを心がけていました。それは「現場主義が道を切りひらく」という考え方でした。彼女は問題を抱えている場所に実際に行き、そこで現地の人から徹底的に話を聞くことで解決策を模索していったのです。何か物事を決める前に、彼女は必ず実際に現場に行くことを大切にしていました。
私はこの徹底した現場主義に非常に強い感銘を受けました。時には自分の命を危険に晒してでも、難民が発生している場所へ赴いていく彼女の姿から、難民問題を必ず解決に導くという強い意志が感じられました。彼女のような、決して揺らぐことのない強い決意をもとに行動する生き方を、私も見習わなければならないと思いました。
映像を見終わった後は、塾長から改めて緒方さんに関することや、現在も未だ根深く残っている難民問題についてお話をしていただきました。その中で、塾長は以前出会ったことのある難民の方について話されました。その人は非常に語学が堪能で、数か国の言語を話すことができました。ですがその理由は衝撃的なものでした。その人は、戦争で故郷を追われたことにより行き着いた、言語も文化も異なる外国で生きていくために言語を身につけたのです。戦争が生み出した辛く苦しい人生を垣間見て、私は非常にやるせない気持ちになりました。同時に、自分がこのような戦争の惨禍を報ずるニュース等に接した時、戦争は良くないことだと思っているだけで、実際には何も行動を起こしていないことに気が付きました。
私はたまたまこの平和な日本に生を受け、今もつつがなく過ごしています。戦争に苦しむ人たちを他人事と思うことなく、戦争も難民もない平和な世界を作るために自分に出来ることは何か考え続けることが、今平和な社会に生きている自分の義務であると強く感じました。
緒方さんが国連難民高等弁務官の職を退かれてから、およそ20年が経ちました。しかしながら今も、ロシアのウクライナ侵攻、ハマスのイスラエル攻撃のように、戦争が止むことはありません。そしてそれにより多くの難民が発生しており、難民問題は未だ世界で最も深刻な社会問題の一つとなっています。そのような社会で生きている私達も、この問題と無関係でいることはできないはずです。自分と社会との関わり方を、今一度考え直す機会となったセミナーでした。