ヤングセミナー
【レポート】人間塾2022年度第16回ヤングセミナー
2022年11月19日
2022年11月10日はヤングセミナーの開催日でした。
ちょうどその前の日曜日に東京地区講演会(第3回目)を行いましたので、塾生たちに、再度アーレントの哲学、そして「ためらい」を持つことの感受性、柔軟性の必要を話しました。アメリカのアファーマティブ・アクションという法律が曲がり角に来ていることにも言及しました。
今回のレポーターは第10期生の末田友太です。
是非ご一読ください。
塾長・仲野好重
人間塾 第10期生 末田友太
(東京農工大学3年)
去る11月10日に第16回ヤングセミナーが行われました。時が経つのは早く、2022年も残すところ1ヵ月と少し。早いところではクリスマスソングも聞こえてきており、夜の寒さに少し寂しさを感じながら、今回のセミナーは始まりました。
今回のセミナーは、先日行われた第3回東京講演会の内容より深め、ユダヤ人差別の歴史から見る、全体主義の恐ろしさについてのお話から始まりました。
ユダヤ人に対する差別の歴史は古くからありますが、その中でも特に悲惨な事例である「ホロコースト」については、ご存知の方も多いと思います。「ホロコースト」というのは、ナチス政権による組織的、国家的に行われたユダヤ人に対する迫害、大量虐殺のことを指します。
塾長先生は、そのナチス政権によるユダヤ人迫害、大量虐殺の責任者の1人であった、ナチス親衛隊の幹部アドルフ・アイヒマンという人物を再度取り上げました。アイヒマンは責任者ということから、彼のサイン一つで多くのユダヤ人の命が奪われました。後に彼は国際軍事法廷で裁かれることになります。そこで彼は、「自分は当時のドイツの法律に従ったまでだ」と供述しました。そのアイヒマンの様子を取材した哲学者ハンナ・アーレントによると、意外にも彼はごく普通の、どこかで見かけたような人物であったといいます。
では、アイヒマンの何が悪かったのでしょうか。それは、その法を前に、人が殺されるという事実を前にして、彼自身が「戸惑い」を一切感じなかったことです。
アーレントは「悪は凡庸な人間の中に存在する」といいました。もし、当時、私たちがアイヒマンと同じ状況に置かれていたらどうなっていたのでしょうか。周りの状況に流され、何も疑問を持たずに虐殺命令書にサインをしてしまわなかったでしょうか。
塾長先生は、このお話を通して、周りに流されるのではなく、しっかりと自分の考えを持って、「ためらい」を感じる心を大切にしながら、行動する重要性を説かれました。
次に塾長先生は「アファーマティブ・アクション」についてお話されました。「アファーマティブ・アクション」とは、社会的な要因(人種や、出自など)による差別で不利益を被っている者に対して、実質的な機会均等を実現するために講じる措置のことをいいます。しかし、現在この「アファーマティブ・アクション」の合憲性が米最高裁判所にて争われています。
一見これは、差別をなくそうとする良い措置に見えます。しかしながら、人種差別に配慮しすぎるあまりに、措置の対象外の人たちが差別されているのではないか、「逆」差別を生んでしまっているのではないか、と問題視されているのです。問題を解決しようとしたところ、また新たな問題が生まれてしまう、そんな世の中の複雑さについて考えさせられました。
今の世の中には、戦争や疫病、差別問題、経済問題など、様々な問題が溢れかえっています。そんな世の中だからこそ、私たちは周りの混乱などに流されることなく、自分の頭でしっかりと考え、自分の意志で行動していく必要があると、強く思わされたセミナーになりました。