ヤングセミナー
【レポート】人間塾2022年度第10回ヤングセミナー
2022年8月26日
8月11日に第10回ヤングセミナーを開催しました。
酷暑にもかかわらず、塾生たちは皆元気に参加していました。短い夏休みを前に、心なしかワクワクしているようにも感じました。
今回のレポーターは、第9期生の髙木菜夏です。
是非ご一読ください。
塾長・仲野好重
人間塾 第9期生 髙木菜夏
(武蔵野音楽大学4年)
去る8月11日に第10回ヤングセミナーが行われました。
今回のセミナーでは、月末に予定されている読書会に関するお話をしていただきました。課題図書は遠藤周作の『深い河』です。以前のセミナーで、「読書は速読で数をこなすのではなく、繰り返し深く読むことが大切である」とのアドバイスを塾長から頂いていました。そして今回のセミナーでは、本を深く読む方法の一つとして、作者の心的世界を知ることが大切であると教えていただきました。また、『深い河』を深く読むためのヒントとして、塾長がこの本をどのように読み解いていらっしゃるのか、実際の体験も交えつつお話しくださいました。
はじめにお聞きしたのは、遠藤のキリスト教の捉え方についてです。塾長はフィリピンの貧困地域を何度も訪れた経験があるそうです。そこで時間を過ごす中で、宗教はその国の文化的背景に基づいて土着していくのではないかと感じられたそうです。宗教は世界中を駆け巡り人々の生活や心に根付いてきましたが、その教えが各国の文化によって変容するのであれば、同じ宗教でも食い違う部分が生まれてきます。遠藤は幼いころに洗礼を受けたキリスト教徒でしたが、彼の作品には、登場人物が文化による教えの変容によって苦慮する場面がでてきます。彼はどのようにキリスト教を捉えようとしたのか、本を繰り返し読む中で模索していきたいと思いました。
次に、遠藤の人生についてお話しくださいました。彼は幼少期を満州で過ごし、両親の離婚後に母に連れられて日本に戻ってきています。その後、浪人時代を経て慶應義塾大学の仏文科に入学し、戦後初の国費留学生としてフランスのリヨンに留学するも、結核を患い帰国したそうです。ここから、彼が挫折や別離を経験してきたことが窺えますが、お話を聞く中で、私は興味深い点に気づきました。それは、彼の人生で起こった出来事と『深い河』に出てくる登場人物の人生がリンクしているということです。本の中では、結核の罹患者やリヨン留学を経験した者、満州で暮らしたことのある者などの人生が描かれています。私にとっての読書は、今までは自分が感じたあれこれを主観的に書き留めるだけで終わっていました。しかし、今回のセミナーを受けて、本に息づいている筆者の考えや苦悩などにまで考えを巡らせることが大切だと感じました。
塾長が私たちに教えてくださったこのような本の読み方は、その本を深く理解するためには欠かすことはできません。遠藤周作が何を思い、この本にどのような思いを込めたのか。作者の心的世界を想像し、主観的な考えだけでなく、客観的な事実やその背景などを踏まえて読書会に臨みたいと思います。
また、今回のセミナーでは、塾長から来年度スカラーシップ生の募集が開始されたことのご報告を頂きました。人間塾では、昨年度からSNSを用いた広報活動も行っています。人間塾の良さがより多くの方に届き、より多くの学生が入塾を希望してくれればと感じました。