ヤングセミナー
【レポート】人間塾2022年度第5回ヤングセミナー
2022年6月14日
6月9日に第5回ヤングセミナーを開催しました。今回は、セミナーを見学したいという学生を迎え、塾生一同、張り切って受講していました。
私は、「みんな」という言葉にこだわって、話をしました。特にこの不安な時代において、幻想ともいうべき「みんな」の存在に、振り回されている人は少なくありません。塾生たちには、責任を持って自らの人生を歩むことの大切さを伝えたいと思いました。
今回のレポーターは、第10期生の末田友太です。
是非ご一読ください。
塾長・仲野好重
人間塾 第10期生 末田友太
(東京農工大学3年)
去る6月9日、第5回人間塾セミナーがおこなわれました。
今回のセミナーでは、「みんな」という言葉に焦点を当て、塾長先生がお話されました。私たちの会話の中で、頻繁に使われるこの「みんな」という言葉。この言葉は一般的に不特定多数の、匿名性の高い集団を指しています。私たちは「みんな」に属しており、無意識にその「みんな」の中に居ることに安心感を覚えています。
しかし、その一部に属したことに安住するのではなく、自分の人生に対して責任を負う必要があります。最近は「みんな」という大衆に紛れることで、無責任に言葉を発し、行動する人が増えています。特に顕著なのが、SNSなどのソーシャルメディアの世界です。その結果、誰か一人が発信した偽の情報などが無責任に拡散されていきます。このような現象がもっと拡大すると、無責任な集団の力で戦争や侵略などに発展する場合も考えられます。
ではなぜ、そのような無責任な「みんな」という集団に私たちは属してしまうのでしょうか。それはこの世の中に不安が溢れており、その不安の中でしっかりと立っていられない人々が安心を求めるからです。自分の軸や信念がないままに生きていると、「みんな」という共同の幻想に呑み込まれ、自分の人生に責任を自覚して生きていくことができなくなってしまうと、塾長先生は話されました。
哲学者マルティン・ハイデッガーの「人間は、自分を、自分でないものによって理解する」という言葉を塾長先生に教えていただきました。人々はよく、他人の視線、他人の評価を気にします。そして往々にして、他人から見た自分の姿を自分の真の姿と思い込んでしまいます。しかしながら、そのようなことをしていると、人間は本来その人が持っている「生きるべき方向」から外れてしまいます。
塾長先生は、悩み、苦しみながらも、本来の自分のあるべき姿を探し、理解していくことこそが、「生きる」ということだと仰いました。他人の評価や視線ばかりを気にし、自分の心からの意見や考えを持てなくなると、「本来の自分として生きる」ことを邪魔されてしまいます。よって、本来の自分のあるべき姿を理解することが必要です。自分の中に一本の軸が生まれることで、「みんな」という目に見えぬ他人の存在に惑わされることがなくなり、不安に押しつぶされることなく生きられるのだと思いました。
今の時代、長引くコロナ禍や、ウクライナでの戦争、日本の経済状況など、様々なことが私たちを不安させます。そんな時、私たちは「みんな」という安心感にすがり、呑み込まれていく可能性が高いのです。自分の意見や考えが曖昧になり、本来の自分の「あるべき姿」を見失ってしまいます。そうなった時、私たちは退廃の道を辿ることになると、塾長先生は仰いました。
そのようにならない為にも、私たちは不安と戦い、「みんな」という無責任な集団に依存することなく、本当の自分の「あるべき姿」を問い続けなければならないと思います。今回のセミナーでは、とても勇気をもらうことができました。