ヤングセミナー

【レポート】人間塾2022年度春季合宿一日目

2022年5月16日

去る5月2日から5日まで、東京の喧騒を離れ、静岡県裾野市で合宿を行いました。

いつもお世話になる黙想の家で、全塾生が大自然のもと、「自分」についてじっくり考える時間を持ちました。まず初日のレポートをお届けします。

レポーターは真面目と面白さが混在する第9期生の吉田光志です。
「お笑い」を追求する宇宙人・吉田の真面目なレポートを是非ご一読ください。

塾長・仲野好重

人間塾 第9期生 吉田光志
(早稲田大学4年)

人間塾の行事の一つに、ゴールデンウイーク期間に小豆島で行われるお遍路研修があります。新型コロナウイルス感染拡大の影響から一昨年に引き続き、昨年も中止となりました。皆の心の中に、今年こそはという想いがありましたが、日程の都合上残念ながら今回もお遍路研修は断念せざるを得ませんでした。しかし、塾生が自分自身とじっくり向き合えるようにと、まとめ合宿で毎年お世話になっている不二聖心女子学院内の黙想の家にて、5月2日から3泊4日に渡る春季合宿が開催されました。

合宿初日、塾長先生は、不二聖心の広大な土地をかつて不二農園として所有していた実業家・岩下清周氏の生涯についてお話ししてくださいました。
学問を修めた岩下は、三井物産に入社します。アメリカやパリでの勤務を経て帰国しますが、会社に不満を抱き辞職します。その後二つの会社を創業すると、それまでの活躍ぶりが三井銀行頭取の目に留まり、銀行員としてスカウトされます。利益を求めて商売するという働き方から、お金を貸すという働き方に移ったのです。

人間塾2022年度春季合宿:塾長の言葉に耳を傾ける

塾長の言葉に耳を傾ける

日清戦争の影響で、当時の財界人は経済情勢に不安を感じていました。そのような時期に岩下は、経済を回して日本を豊かにするという信念のもと、積極的に融資を行い経営者の背中を押しました。しかし、誰にでもお金を貸したわけではありません。業績や成長見込みといった目に見える数字だけで判断するのではなく、相手の商売に対する情熱ややる気を見たのです。その人物の熱意は本物か、本当に日本を良くしたいという心があるのかを見極め、「人物本位」で融資の判断を行ったのです。ところが、その積極的な融資の姿勢が原因で銀行上層部と対立し、またしても彼は辞職に追い込まれます。

塾長先生は私たち塾生に「自分のやるべき事を一生懸命にやっていたら、人はあなたを放っておかない」とよくお話ししてくださいます。岩下はまさにそのような人でした。三井銀行上層部と揉めていた時期、大阪の財界人の間で大阪発の銀行「北浜銀行」を作ろうという動きがあり、岩下にも声がかかったのです。彼はまもなくその銀行の頭取として活躍することになります。工業立国論の考えのもと、人物本位で融資を行い、数々の企業を支援します。その中には、大阪ガスやトヨタ、森永製菓など、今日の日本経済を支えている大企業に発展したものも少なくありません。多くの企業を助け、岩下は信頼と人望を獲得し、北浜銀行の規模は次第に拡大していきました。

しかし、北浜銀行の成長に伴い、岩下や銀行を妬み、良く思わない人たちが出てきました。そして、政治の争いに巻き込まれた挙句、新聞に「北浜銀行は大量の不良債権を抱えている」というデマを流され、最終的に彼は失脚してしまいます。そのような流れを経て、晩年は不二の地で自給自足のユートピアとして農園を営み、多くの人々と共に暮らしたそうです。

人間塾2022年度春季合宿:食後の笑顔

食後の笑顔

岩下は会社員や創業者として利益を求める生き方も、銀行員としてお金を貸し融資する生き方も、農夫として自給自足の生き方も経験しました。失脚するまでの彼は、日本が豊かな国になるようにと懸命に尽くしました。失脚して農園主となった後は、共に暮らす人々を思いやり、農園で暮らす子ども達の為に小学校を建てました。岩下の人生は、地位もお金も手に入れた人生でした。私利私欲のために生きることも可能でしたが、彼はそれをしませんでした。日本が豊かな国になるように、農園が豊かな環境になるようにと考え、行動し続けたのです。

お金も知識も経験も、手に入れた物をどう使うかはその人次第です。果たして、得た物を自分の為だけに使って良いのでしょうか。私たちは社会の中に生き、社会に生かされているのですから、いただいたものは社会に還元する義務があるはずです。ただむやみに生きるのではなく、得た物を何の為に使うのか、何を目標に掲げて生きていくのか、そういった事を考えたうえで生きていくべきだと感じた合宿初日でした。



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