ヤングセミナー

【レポート】人間塾2021年度第19回ヤングセミナー

2021年12月31日

人間塾 第10期生 髙瀨玲也
(東京学芸大学2年)

2021年12月23日、第19回ヤングセミナーが行われました。年内のセミナーはこれで最後となります。本日は、第7期生の西川泉希さんが参加してくださいました。また、ありがたいことに多くの方々からお菓子や果物のプレゼントを頂きました。このような恵まれた環境への感謝の気持ちを胸に、本日のセミナーが始まりました。

今回のセミナーでは、ドイツの作家ミヒャエル・エンデによる名作『モモ』(1973)を題材に、「時間」の真の価値について考えました。物語の中では、「時間貯蓄銀行」から来た「灰色の男たち」の詐術によって時間の節約を始め、そして次第に心が冷え切っていく人々の様子が描かれています。時間の節約によって人々はより有意義な人生を送ることができるようになると思いきや、実はそれは、人々の心を貧しくさせ、人と人とが心豊かに繋がる有意義な時間を失わせるものだったのです。

人間塾2021年度ヤングセミナー:熱く語る塾長

熱く語る塾長

このようにして人々に時間の節約を迫る「灰色の男たち」は、効率主義や合理主義といった、現代にも見られる価値観を擬人化したものであるといえます。デジタル化が加速度的に進む今日、効率や合理性を求める「灰色の男たち」は、私たちの心の中に溢れているのではないでしょうか。そして、それによって私たちは心の豊かさを失ってしまっているのではないでしょうか。そのような、私たち自身の生き方に関わる大きな問いを投げかけられた瞬間でした。

また、塾長からは、「星の時間」についてのお話をしていただきました。時間には、クロノス的時間とカイロス的時間の2つがあります。クロノス的時間とは、時計が刻む客観的な時間を指します。一方でカイロス的時間とは、一回きりしか起こりえない「ここだ」というような瞬間、すなわち人間の内面的な心の時間を指し、これを「星の時間」といいます。塾生はこのお話を踏まえて、「人の心を豊かにするものは何か」という問いの答えを探しました。

人間塾2021年度ヤングセミナー:自分の意見を発表する塾生

自分の意見を発表する塾生

この問いの答えは、「自分の時間を他者に与えること」です。時間というのも、「この人のために何分何秒使った」というようなクロノス的時間ではなく、「今この人にはこういう時が必要だ」というようなカイロス的時間です。このような心の時間による繋がりが、人々の心を豊かにしていくのです。ときどき効率や合理性に惑わされてしまう自分自身を反省するとともに、「星の時間」でものごとを捉えることの大切さを改めて意識するきっかけとなりました。

時間は命そのものです。自分の時間を他者に与えるということは、自分の命を他者に与えるということです。私はこれまで、多くの方々から時間、つまり命を頂いてきました。これから先、私もこれまで以上に、相手のことを真剣に考えて自分の時間を分け与えていきたいと、強く思います。年内最後にふさわしい、大きな学びを得たセミナーとなりました。



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