ヤングセミナー
【レポート】人間塾2021年度まとめ合宿一日目
2022年3月11日
人間塾 第9期生 髙木菜夏
(武蔵野音楽大学3年)
冬の寒さが和らいだ去る2月26日、静岡県の裾野市にて2021年度「まとめ合宿」の1日目が始まりました。今年度は合宿前に全塾生がPCR検査を受け、万全の体調で参加いたしました。
午前中は三島駅からほど近い「ベルナール・ビュフェ美術館」で絵画鑑賞をいたしました。ビュフェは戦後の具象画壇を代表するフランスの画家です。この美術館創立者の岡野喜一郎氏は、戦後の虚無感や不安感を描く彼の作品と出会い、「ひとり(ビュフェ)の天才の才能を通じ、この大地に文化の花咲くことをのぞむ」という思いから本美術館を建てられたそうです。
ビュフェの作品の多くは黒く鋭い線で描かれており、鬱々とした色使いからは戦争への深い悲しみが感じられ、鑑賞後は心がずっしりと重くなりました。また、貧困から画材を購入できなかった時代の作品にはズボンやカーテンで継ぎ接ぎされたキャンバスもあり、彼の絵を描くことへの強い決意や執念が伺われました。
正午に美術館を後にした私たちは、不二聖心女子学院内にある黙想の家という宿泊施設へと向かいました。職員の方々が用意してくださった昼食に舌鼓を打ち、午後からセッションが始まりました。
最初に塾長先生は、この地に不二農園を創立された岩下清周氏のお話をしてくださいました。そして塾生たちはこの広大な敷地内を散策する時間を持ち、各々お気に入りの場所を見つけ、一枚写真を撮影してくるように指示されました。
心地のよい風が通り抜ける緑豊かな自然の中を一時間半ほど散策いたしました。このまとめ合宿は人間塾での学びを振り返り、今後の塾生(修了生)としての覚悟を決める重要な合宿のため、最初は意識的に緊張感を持って合宿に臨んでおりました。しかし、お気に入りの場所で過ごす時間は私を穏やかな気持ちにさせてくれました。やがて緊張感も解かれ、素直に自分の心と向き合い、学びの振り返りをすることができました。
散策後は撮影してきた写真を皆と共有し、なぜその場所が心地良いと感じたのかを塾生それぞれが詳しく話しました。写真には森林の中の一本道や視界の開けた茶畑、また、走り回る子ども達の姿が想起される学院の外通路などが写されており、お気に入りの場所をひとつとっても塾生それぞれの性格や好みが感じられ、大変興味深い発表でした。
一通りの発表の後、塾長先生から「魅力に感じた具体的な理由は何か」と問いかけがされました。「自分が面白いと感じることが魅力であり、その明確な理由はわからない」という塾生に対して、「なぜ自分が面白いか否かに拘るのか」、その理由を突き止めることが自分の使命を知ることへも繋がると塾長先生は述べられました。加えて、「面白い・ワクワクする」と言った抽象的かつ主観的な表現を、具体性と客観性の観点から人に伝えることが大切である。さらには、人に「手伝ってあげたい」と思わせるような方法で自分の使命や正しいと信じることをやりなさいと話されました。相手によって伝え方や言葉を変えながら自分の思いを表現することは私にとっても大変困難であり、依然として改善できていないことの一つでした。考え方の異なる人を前に諦めたり自分の意見を押し付けたりするのではなく、相手と自分の間に新たな観点を作り出すような「間主観性」を今後養っていきたいと感じました。
「お気に入りの場所の共有」というユーモア溢れる手法によって、他の塾生の過去の体験や思いもよらない日々の葛藤を知ることができ、今まで以上に塾生間の距離が縮まったように感じた1日目でした。