ヤングセミナー

【レポート】人間塾2020年度第20回ヤングセミナー

2020年12月24日

人間塾 第7期生 冨岡平祐
(埼玉大学大学院修士1年)

去る2020年12月10日、人間塾第20回ヤングセミナーが開催されました。今回のセミナーは、オペレッタ「こうもり」のお話から始まりました。仲野塾長はこの物語のあらすじと初演の頃の時代背景などをお話くださいました。「こうもり」が初演を迎えた1874年は世界的なコレラ流行の第3波の時期と、ウィーン万博の開幕直後に発生した大不況の影響があったそうです。そんな社会情勢の中、上演されたこうもりは「今を楽しく生きよう」というメッセージを込めて作られました。また、「こうもり」は毎年、ウィーンで大晦日に上演される演目であると塾長から紹介がありました。こうして長年にわたりこの作品が愛されているのは、観客の心を暖かくし、今を心から楽しんで生きるというメッセージを持っているからだと、私自身も感じました。

人間塾2020年度ヤングセミナー:真剣な眼差し

真剣な眼差し

続いて塾長は「空の空、空の空、いっさいは空である」という、旧約聖書の中の「コヘレトの言葉」を塾生に教えてくださいました。聖書学の理解の中に、事象の深い部分には何か意味が必ずあると考える「黙示思想」があるそうです。「コヘレトの言葉」は、この黙示思想とは趣が異なっており、隠された意味を積極的に求めるような文章ではありません。

太古の昔から続く人間社会の営みの中で、人は何度も戦争を起こしています。どれだけ発展しても不作、疫病、戦争、不況など、いつの時代にも繰り返し起こっています。このように、完成しない、終わりのない循環世界で、人間はどう生きるべきなのかを、コヘレトは示しています。この問いに対し、「人間にとって最も良いのは飲み食いし、自分の労苦によって魂を満足させること。しかしそれらも神の手からいただいたもの」という一節を教えていただきました。飲み食いは日常生活の喜びであり、人間として生きていくために必須のことがらです。そして、自分の背負ってきた苦労や努力を自分で認めながら、自らの魂を満足させることが大切であるとコヘレトは説いています。

辛いことを仕方のないことだと捉え、今を一生懸命に生きていくことを大切にしようとする姿勢は、「こうもり」の中で語られた『忘れられればそれで幸せ、どうしようもないことならば』という台詞の中にも感じられるものでした。塾長は、オペレッタ「こうもり」と「コヘレトの言葉」の共通性を話されたと思いました。1870年代当時の不安な情勢と、コロナ禍に見舞われた今日の社会が重なって見えてきます。私も、自分の魂が満足し、生きていること自体を賛美する気持ちで「今」と向き合いながら生きていきたいと思いました。

今回のセミナーには懐かしい仲間が来塾してくれました。昨年度共に学び修了した8期生の島村拓弥君です。九州大学大学院で研究生活を送っていますが、週末の同窓会総会に参加すべく東京に帰ってきていました。それぞれ異なる道を歩みながらも、人間塾に帰ってくることで顔を会わせることができるのは幸せなことです。それぞれの分野で励んでいる仲間の姿を見て、私も自分が蒔かれた場所で頑張ろうと改めて感じたセミナーでした。

人間塾2020年度ヤングセミナー:懐かしい仲間と

懐かしい仲間と




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