ヤングセミナー
【レポート】人間塾2020年度第9回ヤングセミナー
2020年7月21日
人間塾 第8期生 北井結夏
(津田塾大学3年)
2020年7月9日、人間塾第9回ヤングセミナーが行われました。今回もソーシャルディスタンスを守り、対面でのセミナーを開催することができました。
セミナーは、ヘレンケラーのお話から始まりました。ヘレンケラーは、聴覚、視覚、ことばが不自由な重複障がい者でした。彼女の家庭教師をしていたサリバン先生が、ある方法で彼女に多くの言葉を教えました。その方法は、ヘレンに触覚で物を感知させ、その後すぐに掌に文字を書くというものです。セミナーでは、なぜヘレンは触れた物と指文字を結びつけて覚えることができたのかについて考えました。
この疑問に対する答えを示しているのは近代哲学者のカントだと塾長は話されました。カントは、人が生きていく上で、感性(時と空間で経験すること)、悟性(概念)、そして理性(推論)という3つの能力の特徴があるといっています。また、私たち人間には「ア・プリオリ」という生まれながらに共通に備わっている機能があるとも言っています。その「ア・プリオリ」の一つに、感性の前後の出来事を結びつけるというものがあると塾長が説明してくださいました。この機能こそ、なぜヘレンケラーが物事を結びつけて覚えることができたのかへの答えの一つだと思いました。
次に、塾長はカントの論じた人生の三つの特徴の一つである「理性」についてお話くださいました。「理性」は、結論を持たない問題に対して考え続けることを可能にする能力です。そのため、「理性」を用いることで人間が最も知りたい「何のために生きているのか」「神は存在するのか」「宇宙の始まりはいつどこでか」などの疑問に向きあってきた、とカントは述べています。
これらの疑問の中でも、「何のために生きているのか」という問題は、人間塾で塾生が日々考えていることの一つです。カントが「理性」を使い目指すことは、人間塾での学びや指導にとても似ていると感じました。私は、自分の成長に磨きをかけることや、自分の能力を使い他者の幸せの手伝いをすることがとても重要であると人間塾で学び、常日頃から意識をしています。このことは、特にカントの「主体的に考える姿勢を持ち、主体的な判断の元、道徳的に生きることが重要である」という考えと共通していると思いました。
さらに、塾長はカントに続けてマルティン・ブーバーの「我と汝」のお話をしてくださいました。他者を物のように扱う世の中に警告を鳴らしたブーバーは、人格を持つ者同士は「対話」を用いて互いに理解し合うべきだと述べています。私も現代社会の中で人と人の関係が希薄だと感じることがあります。より多くの人が他者の人間性を見つめることの大切さに気付けるように、私は「対話」のある人間関係を構築し続けたいです。
人間塾では、毎回難易度の高い内容を塾長が分かりやすく説明してくださいます。今回のセミナーを通じて改めて人間塾で学べることが貴重なことであると感じました。これからも、難しいことにもしがみついて貪欲に学んでまいります。