ヤングセミナー
【レポート】人間塾2020年度第8回塾生シンポジウム
2020年10月26日
人間塾 第7期生 西川泉希
(国際基督教大学4年)
2020年10月18日、素晴らしい秋晴れの元、2020年度人間塾塾生シンポジウムが開催されました。今年で8回目の開催となりましたが、今年は今までとは少し趣が違いました。本年は、新型コロナウイルスの影響もあり、数多くのイベントが自粛せざるを得ない中、このシンポジウムも、一時はオンラインでの開催も検討していました。しかし、実際に参加者の方々とお会いして語り合う事の重要性を考え、マスクの着用やこまめなアルコール消毒など、感染症対策を慎重に行い、対面で開催する運びとなりました。
本年は「あなたのプライドは“本物”ですか?」というテーマを掲げ、二部構成で議論や発表が行われました。はじめに、仲野塾長よりプライドについての導入をしていただきました。具体的なエピソードを交えてお話下さり、このテーマについて考えるにあたって、いくつかヒントをいただきました。参加者の方々は、この導入を聞いて過去の自分を振り返り、プライドについて今一度考えたのではないでしょうか。
私は、一つの班でファシリテーターとして参加していました。参加者たちも塾生もそれぞれ違った意見を持ち、プライドについて互いの意見を交換しました。そして、私の班の中では国籍や人種という生来の属性に対するプライドと、経験などから生まれてくる後に作り上げていくプライドがあるのではないか、との議論になりました。また、その違いは何か、という疑問が生まれたところで、第一部の議論が終了しました。その後、各班の発表者から議論の内容の分かち合いが行われ、それを受けて、仲野塾長に第二部で話し合う新たなテーマをご提示いただきました。
仲野塾長は各班の発表を聞いた上で、私たちが考えたプライドは表層的な部分があるので、それを支える土台の「dignity=尊厳」について考えてみましょう、とおっしゃいました。尊厳は誰にも侵しがたい心の領域であり、全ての人が持っているものです。テーマをさらに深く掘り下げ、私たちのプライドの根幹について考えるために、第二部では「dignity(尊厳)とは何か?」について話し合うことになりました。
私が参加した班では、テーマに対して具体的なイメージを持てない人も多くいる中、ある参加者が「尊厳は愛だと思う」と発言してくれました。ほとんどの参加者がその意見に賛同されましたが、「愛にもたくさんの種類があるのではないか」と疑問を持った人もおりました。そこで、班内では愛にはどのような種類があるのか、どのような愛が尊厳と呼べるのかという議論をして、第二回の討論が終了しました。第一部と同じく、それぞれの班での議論内容を発表者が分かち合い、仲野塾長に全体の総評をいただきました。
仲野塾長は、哲学的な考え方をもとに、人間には二つの側面があると言われました。それは、目に見える「個性」と目には見えない「精神性」の二側面です。今回テーマだったプライドや尊厳は、私たちの精神的な部分であり目に見えるものではありません。そこには自らの意志によってお互いの存在そのものを認め合おうとする、厳かで気高い精神が尊厳のもとになっているのではないか、と仲野塾長は問いかけられました。そして自分自身の尊厳を認めると共に、相手の尊厳をも認めることで、若者たちには、これからの社会をより良いものにしてほしいと、熱く語っていただきました。大変高揚した気持ちの中で、シンポジウムは無事終了いたしました。
参加していただいた多くの方々から、「楽しかった」「人間塾をもっと知りたいと思った」というお声をいただき、運営に携わっていた者として、本当に嬉しかったです。イベントの開催が難しい状況下にもかかわらず、今年度のシンポジウムを無事に終えられましたのは、お力を貸していただいたすべての皆様のおかげです。本当にありがとうございました。