ヤングセミナー
【レポート】人間塾2017年度第1回ヤングセミナー
2017年4月18日
人間塾 第5期生 臼井文貴
(慶應義塾大学3年)
去る4月13日、2017年度第1回目のヤングセミナーが開催されました。先日入塾した6期生にとって初めてのヤングセミナーとなりました。どんな話を聞くことが出来るのか、期待に胸を弾ませながら、緊張の面持ちで塾長の一言ひとことに耳を傾けていました。
塾長は、今回のセミナーの主題に入る前に、エーリヒ・フロムの「自由からの逃走」と、夏目漱石の「こころ」という二つの本を用いて「自由と孤独」についてお話をされました。「自由からの逃走」では、自由は一見よいが、自由がもたらす結果としての孤独を受け止める覚悟もまた同時に持たなければならない、という思いが述べられています。夏目漱石の「こころ」においても、近代の個人主義の帰着点としての孤独が描かれています。自由は人に傲慢さや自己本位の精神を生じさせ、そのために人々は孤立し、互いに対立します。その成れの果てとして、現在の世界では、米国のシリア空爆や北朝鮮攻撃態勢の準備など日々恐ろしいニュースが飛び交っています。その様な現代の人々の思想を歴史から紐解き、客観的に学ぶことができる良い機会となりました。
塾長はその後、今回の主題として、「手放したいのに手放すことのできないもの」について、塾生一人ひとりに問いかけました。「周りからの期待」や「他人からの評価」などが、回答として挙がりました。塾長は、塾生皆に「こう見られたい、こう見せるべき」という構えを取り除く必要性を説かれました。私たち学生は試験などを通して、他者から選考される機会が多く、小手先の表面的な評価に振り回されがちです。しかし、自分の肩書などすべてを取っ払ったとき自分に何が残るのか、それを今、若い時に考えなければならないと強く感じました。
また、塾長は「人は生きるから死に、そして死ぬから生きる」と仰いました。その意味を、塾長は自らの阪神大震災の際の思い出とともに語って下さいました。お話を通じて、人は自分が死ぬ(小さな犠牲を厭わないこと、我慢すること、耐え忍ぶこと)ことで、他者を生かすことができるということを学びました。その他者が今度は自分が死ぬことを通じて、また別の人間を生かすことができます。その様な循環を続けていくことで社会はより良くなると思いました。そして、自分自身は今、他者のために自らの小さな死に挑んでいるかどうか、セミナー後の何日間か考え続けています。このことを意識して考えながら生活していると、日々自らの多くの行動が変わっていくことに気付かされています。
今回のセミナーは、殺伐としたこの世界で起きている出来事に思いを巡らし、現代社会で傲慢になった私たちの生き方について、もう一度考え直す時間となりました。