ヤングセミナー

【レポート】人間塾2016年度第9回ヤングセミナー

2016年9月27日

人間塾 第4期生 梅山翔平
(筑波大学4年)

9月15日のセミナーは軽井沢合宿直前に開催されました。軽井沢合宿経験者は気合を入れ直し、初めて参加する5期生は『塾長が一番大事とおっしゃる軽井沢合宿とはいったいどんな合宿なのだろう』と期待半分、恐れ半分で臨みました。そんな中、修了生の奥山真希さんがハムを差し入れて下さいました。壺井さんがそれをサンドイッチにして下さり、皆でおいしくいただきました。いささか緊張もほぐれたところでセミナーが始まりました。

人間塾2016年度ヤングセミナー:久々のセミナー

久々のセミナー

人間塾2016年度ヤングセミナー:ハムを頂きました

ハムを頂きました

今回のセミナーでは合宿でのテーマについてお話がありました。先週の塾長講演会で、新渡戸稲造についての講演が開催されましたが、この講演の背景となるテーマは『共同体の中で生きる個』というものです。今回の軽井沢合宿はこの『共同体の中で生きる個』を一つの切り口として、自分と向き合う時間にしてほしいと塾長はおっしゃいました。

今の世の中の風潮として『個人主義』が取り上げられることが増えています。しかし、その考えは「自分を大切にする」というところから「自分さえよければよい」といったように誤った解釈をされることが多いように感じます。実際塾長が電車内で自分勝手な振舞いをする人に遭遇し、とても残念に思ったそうです。自分勝手に振舞う人も何らかの共同体に属しています。その共同体の中で大切な役割を担う事もあるでしょう。家族という最小単位の共同体の中で、その人の母は苦しい思いをしてその人を産み、一生懸命育てた経緯もあるはずです。私たちは決して一人では生きていないのです。一人で生きているようでも、何らかの共同体に属しています。その中でどのように生き、何ができるのかを考えなくてはならない、と塾長はおっしゃいました。

塾長は、そこでライオンズクラブとロータリークラブの紹介をなさいました。ライオンズクラブは世界で最も大きい社会奉仕団体の一つであり、モットーとして”We Serve.(われわれは奉仕する)”を掲げています。ロータリークラブも国際的に大変大きな社会奉仕団体で、モットーとして”One profits most who serves best(最もよく奉仕する者、最も多く報いられる)”を掲げています。このような団体には様々な背景を持つ人々が参加しています。そしてその人によって何を奉仕するかは異なります。それでは、私たちは一体どのような形で社会に奉仕することができるのでしょうか。

塾長は一人の宣教師であったマキシミリアノ・コルベという神父様を紹介なさいました。コルベ神父はポーランド出身のカトリックの神父で、第二次世界大戦前に日本の長崎へ派遣されてきました。その長崎で学校や福祉施設をつくり、教えを広めると同時に地域社会に貢献します。しかし、第二次世界大戦が始まり、ポーランドへ呼び戻されることになります。そんな折、ナチスドイツがポーランドへ侵攻しました。戦争反対の声を挙げたコルベ神父は、悪名高いアウシュビッツ強制収容所へ連行されてしまいます。その劣悪な環境の中でも希望を捨てず、周囲を励まし続けました。しかし、毎日のように囚人は看守たちの気の向くままに呼ばれ、そして殺されていきます。そんなある日、ある男性が餓死刑に処せられることを宣告されます。その男性には妻子がおり、必死で助命を嘆願しますが聞き入れられません。その時、コルベ神父が『私には妻も子もいない。私を代りに連れていきなさい』と身代わりを申し出ます。そしてコルベ神父は身代わりとなり、最終的には毒殺されてしまいました。

彼のこのような逸話が残ったのは偶然にも身代わりとなった男性がアウシュビッツ収容所から生き残ったためです。しかし、この男性が生き残る保証など、最初はどこにも無かったのです。しかも彼が助けることができたのはこの男性たった一人です。それだけの為に自らの命を捧げる、という選択が私たちにできるでしょうか。その時、コルベ神父が捧げる事が出来たのは命だけでした。収容所に入れられ、全てを奪われた彼は、最後は命しか持っていなかったのです。そのたった一つものをコルベ神父は差し出しました。私たちはそれに比べていかにたくさんの物を頂いて、所有しているのか。そしてそれらを惜しみなく使って奉仕できているのでしょうか。軽井沢合宿直前に自分の立ち位置、そして生き方を厳しく問い直すセミナーとなりました。



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