ヤングセミナー
【レポート】人間塾2016年度小豆島・遍路研修(第四日目)
2016年5月9日
人間塾 第5期生 上江洲仁美
(慶應義塾大学4年)
お遍路も四日目を迎えました。前日の暴風雨吹き荒れた厳しい天気とは打って変わり、今日は暖かい日差しに爽やかな風が吹く良い天気となりました。しかし、足はずんと重く太腿が筋肉痛になっていました。
前日のお遍路が思った以上に厳しく辛いもので、今日もやりきれるだろうかと不安になったとき、前日の夕食後に塾長がしてくださった話を思い出しました。般若波羅蜜多心経は、ありのままの自分を受け止めよう、飾らない自分でいいじゃないか、という考えを広めるためのアバンギャルドなお経であったということです。荒れた岩場を四つん這いで登るとき、私たちは格好なんて構っていられません。メイクが落ちて、汗でどろどろになって、それでも歩みを止めない、そんな私たちを「羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦」(ぎゃていぎゃてい はらぎゃてい はらそうぎゃてい)と励まして応援してくれているのだと思うと、不思議と力が湧いてきました。
厳しい山々を乗り越えながら、私は自然の雄大さを感じました。斜面を登っていると、鬱蒼とした竹藪の暗さや、葉が風で触れ合うことによって起こるざわざわという大きな音に不穏感や恐怖を感じます。しかし登りきってみて、足元ばかり見ていた視線を上げると、自然の様子は一変しました。暖かな木漏れ日は私たちを照らし、爽やかな風が体を通り抜け、木々のさわさわという音が私たちを優しく包んでくれます。そのときに私は、自然は侵入してくる人間をただ見守っているのだと気付きました。ただ存在する自然に対し、私は厳しい、偉大だと勝手に感じているだけだったのだと分かりました。どこまでも続く山々や、高く天へ伸びる竹藪に、私はちっぽけだな、私たちはこの豊かな自然に生かされているのだと知りました。他にも行く道々やお寺で、満開のツツジや菖蒲、鮮やかな紫、オレンジのぼんぼりのように咲く花に出会い、心が癒されました。緑にも新緑色から深緑まで様々な緑があること、落ち葉は茶色だけではなく、鮮やかな赤があることなど、普段は見過ごしてしまいがちな自然の豊かさを感じ、私は深い呼吸をすることができました。
お遍路を通して、雄大な自然はもちろんのこと、「ちりりりん」という素敵な鐘の音で私たちをずっと導いてくれた森下さん、バスで送迎してくださる奥村さん、美味しい食事や宿を提供してくださる長栄堂の皆様、お接待を頂いた暖かいお寺の人々、塾長や壺井さん、励まし続けてくれた塾生のみんな、今まで育ててくれた家族など、たくさんの人に支えられて私は生きているのだと強く実感し、感謝で胸が一杯になりました。貰い過ぎというほど貰ってきたものを、今度は私がどう社会に返していけるのだろうかと、私はこれから一生懸命人間塾で考えていきます。