ヤングセミナー
【レポート】人間塾2015年度第4回ヤングセミナー
2015年6月12日
人間塾 第3期生 木村優吾
(早稲田大学4年)
東北大震災の影響により、多くの人は自然の摂理から離れた現代の暮らしに疑問を持つようになりました。例えば田舎にUターン、Iターンをする者や、スローフード運動のように食生活のあり方を変える者が増えてきました。あの災害で大量生産、大量消費型の資本主義がもはや持続可能ではないことが露呈したと同時に、我々にとって幸せとは何かが問われたのではないかと思います。
今回のセミナーのテーマである、幸せは何かとの問いに対して、塾長はアダム・スミスの思想を引用されました。「見えざる手」が象徴するように、アダム・スミスといえば規制撤廃や競争促進を標榜する利己的な自由放任主義者のように思われがちです。しかしスミスは何よりも「共感」を大切にし、市場は共感に基づいた相互協力の場だと説明しました。つまり人々の感情を無視した独占や騙しあいのような公正でない競争は本来の市場の姿ではないということです。翻って安い人権費で雇われ、貧困の負の連鎖に陥る非正規雇用や、遠い国の低賃金労働者が作った廉価な商品を消費する現代は「共感」が欠けていると言わざるを得ません。スミスは物質的に富める事自体は良いとしながらも、共感の心を忘れては幸せにはなれないことを示唆しています。
塾長は次にフロイトの幸せの哲学、すなわち「幸せとは愛する者の幸せを願うこと」を紹介されました。愛する者の幸せとは、その人がその人らしく自分を最大限発揮して生きている姿のことです。転じて自己否定をせず、自分に自信を持って生きることが自分の幸せにつながり、他人にとっても幸せになるのではないでしょうか。
二人の著名人の思想を借りて幸せの意味を探求しましたが、最後にセミナーで紹介されたメーテルリンクの「青い鳥」が含蓄に富んでいました。この作品では、兄弟は幸せを象徴する青い鳥を探し求めに様々な国を冒険します。しかし一向に青い鳥を捕まえることができずにいた兄弟は、家に戻ると、実は始めから自分の家の籠に青い鳥がいたことを発見します。幸せは案外すぐそばにあり、それに気づいていないだけなのだと感じました。