ヤングセミナー
【レポート】人間塾2014年度第18回ヤングセミナー
2015年2月19日
人間塾 第3期生 佐々木瑛代
今年度のセミナーも佳境に入り、4年生にとっては残り2回のセミナーとなりました。人間塾での日々の終わりはすぐそこに見えるかのようですが、仲野塾長からは、これからも続いていく人生において、「主体的に生きる」ことについて考える機会をいただきました。
仲野塾長からの「主体的に生きるための心構えは?」という問いに対して、塾生一人ひとりが迷いながらも、自分の思う心構えを答えていきます。その応答に対して仲野塾長は、「それぞれの自己への強烈な意識を感じる」とおっしゃいました。「皆の回答からは自我ばかりを強く感じる。だが、他者についてはどう捉えるのか?」と問われた私たちは戸惑いました。確かに、私たちは日々他者と共に生きている。だからこそ、自己意識だけでは生きてはいけないのです。
セミナーでの話は、ニュースで報道された出来事に移ります。その一連の出来事(たとえばイスラム国に関する報道など)を通して何を感じたか、何を考えたかを思い起こしていきます。ここで仲野塾長は「あなたはこの出来事のために何をしたか?」と私たちに問われます。私たちは全員首を横に振りました。誰しもそのことについて気になっていた。考えたことが幾つもあった。でも私たちは、誰一人として何もしなかったのだという事実が見えてきます。
ここで私たちは、ひとつの概念を教えていただきました。それは「アウトサイダー」という言葉です。これは、ある事柄を自分のこととして捉えられない人を意味します。報道を通して知る出来事に対して心配し、何かを感じ、考えた私たちは「傍観者」ではなかった。高みの見物ではなかったけれど、私たちは「傍観者的」であり「アウトサイダー」だったのです。
私たちは、ニュースを見れば見るほど、「アウトサイダー」だということを意識せずにはいられないのです。では反対に、どんな時には「アウトサイダー」ではなくいられるのか。家族や親せき、友人や所属する大学、地域に関わる出来事…について思い巡らせるとき、アウトサイダーではいられなくなります。同時に、「どこまでがあなたの近い他者で、どこまでが遠い他者なのか?一体どこで線引きしているのか?」という問いに対しては沈黙してしまいます。
仲野塾長はここで、主体的に生きるために必要な「engage」という考え方について、説明してくださいました。フランス語で「アンガジェ」と読みますが、意味は「ものごとに参加すること。特に、知識人や芸術家が現実問題などに取り組み、社会活動に参加すること」です。「知識人」とは社会においてある一定の理想をもって生きている人たちをさし、また「芸術家と」とは自分の人生を創造する人を意味します。そして、私たち塾生もそこに含まれると仲野塾長は指摘されました。
自分の人生をつくり、主体的に生きるには、他者への関心、他者を自分のこととして捉える意欲をいつも持っていなければならない。ニュースで流れてくる出来事や周りで起こっていることを、自分の兄弟姉妹に起こっていることとして捉え、それに思いを馳せることは「アンガジェ」の精神の一歩であり、「アウトサイダー」にならないことです。自分にとっての他者の人生が、自分に重なった時にどう響くかを考えること、他者に関心を持ってつながっていくことが、これからの私たちには必要です。常に自己意識だけでは、真に「主体的」に生きることはできないと仲野塾長は話されました。
「主体的」と聞くと自己意識に視点が行きがちですが、真に「主体的」に生きる時、「アウトサイダー」になってはいけないと学び、他者と関わり方を考え直す機会となりました。特に、私は「ここまでが私の近い他者で、関わるべき人だ」と自分で決めつけがちでしたが、それは「アウトサイダー」に近い考え方であり、誰かの他者になろうとしない自分を選択していたことに気づかされました。「アンガジェ」の精神は、一見私の「遠い他者」と思われる人にも関わっていくことであり、それが真に主体的に生きることに繋がると思い直し、これからは「誰が私の他者か」という問いに対して、自己意識の中で決めつけないようにと新たに決意させられるセミナーでした。