講演会

【レポート】人間塾2022年度第四回東京講演会

2023年2月7日

2023年1月29日、塾長による東京講演会を開催いたしました。今回は、オンラインでの配信による講演会にさせて頂きましたが、大変多くの方々がご参加下さいました。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。

この日のテーマは、「恕」と「勇」の精神で「善行」をいかにして実現するかについてでした。私が敬愛する小泉信三氏、そして小泉氏の恩師である福沢諭吉先生の含蓄ある言葉を追いかけながら、論語の世界を皆さんにご紹介しました。昨今は、物騒で冷酷な事件が多発しています。戦争も終わりが見えません。そのような状況の中、私たちに出来ることは何なのでしょうか・・・・。

今回のレポーターは、第11期生の江渡恵里奈グレースです。
是非ご一読ください。

塾長・仲野好重

人間塾 第11期生 江渡恵里奈グレース
(北里大学2年)

去る1月29日、第4回東京講演会がオンライン形式で開催されました。いよいよ今年度最後の東京講演会となりました。テーマは「思いやりと勇気の善行」です。

今回はキーワードである「恕」と「勇」を紐解くところからお話が始まりました。これらは古くから日本で使われてきた言葉であり、孔子の『論語』にも登場します。日本における善のありかを探るという今回のテーマにおいて、とても重要な言葉です。

「恕」は、人の身の上や心情を察すること、すなわち、思いやりを持って相手の立場に立ち、物事を見つめる寛容な気持ちです。また「勇」は、物事を恐れない強い心の状態を指しています。加えて、『論語』には「忠」という言葉も出てきます。これは誠実に人に尽くす姿勢を表します。

人間塾2022年度第四回東京講演会:講演会の様子

講演会の様子

これらをふまえて、塾長は私たちに「恕の精神はこれからの日本に残っていくのでしょうか?」と問いかけられました。個人主義が浸透した現代において、私は周りと自分とが分断されつつあるように感じることがあります。また、新型コロナウイルスのような不条理に直面し、世の中は混沌とした状態になっている印象も受けます。このような現状を抱える今の日本に足りないものは「恕」の精神なのです。より良い社会を作るためには「恕」をもとに「勇」の姿勢で立ち向かう必要があるのだと塾長はおっしゃいました。

そして、講演会では、さらに2つの言葉が紹介されました。

一つ目は、慶應義塾の元塾長である小泉信三氏の「善を行うに勇なれ」という言葉です。これは怯懦(きょうだ)を恥じる心、つまり挑戦しようと思ったことに対して臆病にならないことの大切さを説いています。

二つ目は福沢諭吉氏の「徳教は耳より入らずして、目より入る」です。これは、善きことを実践しているところを実際に見ることが、何よりも一番の学びになるということを意味します。

これらは若者の心を育む上で大切なことを教えてくれる言葉です。「勇」の精神を忘れず、目で見て学ぶことができる善行が、この世には多くあるのだろうと思いました。

また、私たちには「道徳」と呼ばれる、外れてはならない人間としての道があります。しかし同時に、私たちには、道徳を忘れてしまうことや、その重要性に気付いていながらも無視を決め込むときがあります。道徳から逸れてしまいそうになった私たちの心を励ますために、孔子などの先人たちは数々の言葉を遺し、人の身になって考えるという「恕」の精神の大切さを伝えてきました。この精神こそが道徳の中心だとも言えるのではないのでしょうか。

塾長は最後に、「現在の日本においても『衣食は足らずとも礼節を知る』を忘れてはならない」とおっしゃいました。これは戦後に生まれた表現であり、従来の「衣食足って礼節を知る」ではよい社会を作ることはできない、という危惧の気持ちが込められています。たとえ衣食が足りなくても、すなわち経済的に物質的に十分でなくても、道徳的精神を大切にしなくてはいけないという教えです。「恕」の精神があってこそ、思いやりある善行があってこそ、日本が成長するという意味が込められています。現代においても、社会をより良い方向へ導くために、人格の涵養は大切であり、道徳を実践する人の存在は重要なのです。

人々はたどる道は違えど「社会をより良くする」という共通のゴールを目指して生活していくべきだと、私は思います。そして、その実現には「恕」の精神が必要になるということを、この講演会を通して学びました。それにはまずは一人ひとりが自分に与えられた使命を理解することが大切です。自分の「分」をわきまえ、それを他者の為に最大限に生かすことで、思いやりが生まれるからです。その意識を常に持った謙虚な人間になることができるよう、精進してまいります。



2021年スペシャル企画!『人間塾と私』塾生・修了生インタビュー 2023年 塾長講演会音声記録
トップ
トップ