講演会
【レポート】人間塾2022年度第二回東京講演会
2022年9月22日
去る2022年9月4日に、第2回目となる東京講演会を開催いたしました。
会場にお越しくださった方々、そしてオンラインで視聴してくださった皆様、いつも熱心にご参加下さり、ありがとうございます。
今回のレポーターは第9期生の山本天智です。
是非ご一読ください。
塾長・仲野好重
人間塾 第9期生 山本天智
(国際医療福祉大学4年)
9月4日、第2回東京講演会が行われました。今回も新型コロナウイルス感染症への対策を取りつつ、対面とオンラインでの同時開催でした。今年度の全体テーマとして、塾長は「善く生きるために」を掲げておられます。このテーマのもと、第2回目となる今回は、「感染症という不条理に向き合うこと」というタイトルで講演が行われました。
塾長は、現代社会における不条理について話され、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻という二つの大きな出来事に言及されました。これらの不条理を前にして、自らの利益や保身を最優先に考え欲得に溺れる人々と、自らを律して謙虚に生きようと努める人々に二分されると塾長は指摘されました。コロナ禍による給付金詐欺や、ウクライナ侵攻に伴う各国の利害関係、核の脅威による大国同士の争いなど、世界中を席巻する不条理を前に、今や国際社会は建前が崩れ、本音が露出していると塾長は話されました。
これらの現実を踏まえて、今回はアルベール・カミュの著作『ペスト』を通して感染症の不条理について考えました。『ペスト』はアルジェリアのオランという町で起こった恐ろしい疫病の流行を背景に、登場人物の様々な人間像を描いた物語です。主人公の医師リウーとその仲間たちが、懸命にペストの治療にあたり、様々な困難に遭遇しながらも、パンデミックを乗り越えていくというお話です。感染症の大流行という題材が、昨今のコロナ禍に重なり、ここ数年話題となった作品です。
『ペスト』でカミュが描こうとしたのは、感染症という不条理と共に生きる人々の人間性でした。リウーたちのように疫病を自分たち一人一人の問題と捉え、私利私欲ではなく他者への配慮をもって行動する人間と、自らの利益ばかりを求め自己中心的に行動する人間に二分される様が見事に描かれています。仲野塾長はこのような人間模様は、現在の社会にも当てはまるのではないかと指摘されました。
現代社会は経済至上主義が席巻し、数字やデータがあふれています。そしてその均一化された数字やデータを前に、私たち自身も大衆の一部と化し、疫病や戦争を自分事として考えることを放棄してしまっているのではないでしょうか。
ニュースや新聞などで新型コロナウイルス感染症でなくなった人々、ウクライナへの侵攻による死者数を日々報道していますが、その数字の裏には亡くなった人間一人一人の人生の重みがあります。私たちはその一人一人のいのちの重みを受け止めなければならないと仲野塾長は仰いました。そして自分で感じ、考え、より良い選択と判断をすることが何より大切だと仰いました。
現代社会では、様々な理由や言い訳を盾に、殺人や暴力が横行しています。そのような行為に対する「ためらい」という倫理的感性を持ち、大衆に飲み込まれることなく謙虚に生きていくことが大切だというお話で講演は締めくくられました。
今回の講演会で私は、自分自身も数字ばかりに目がいき、その背景にある一人一人の思いまで考えることが出来ていなかったと反省しました。疫病や戦争に対して、当事者意識を持ち、大衆に飲み込まれず自分の頭で考えることを常に意識して日々過ごしていきたいと思います。