講演会
【レポート】人間塾2021年度第五回東京講演会
2022年2月12日
人間塾 第10期生 藤原三千花
(国立音楽大学3年)
去る2月6日、仲野塾長による東京地区第5回講演会が開催されました。2021年度の講演会は「希望を持って生きる~先駆性と斬新さに挑んだ人々~」というテーマのもと開催されてまいりましたが、本講演はその最後を締めくくるものでした。今回のタイトルは「人間の在り方を考える~ルース・ベイダー・ギンズバーグ:信念と法~」です。
ルース・ベイダー・ギンズバーグはアメリカ合宿国の最高裁判所判事に任命された史上2人目の女性で、ユダヤ人女性としては初めての方です。講演会ではまず彼女の生い立ちに触れながら、どのような価値観に基づいて法曹界の改革を推し進めていったのかが語られました。ギンズバーグは男女格差が当たり前とされていた当時のアメリカで生まれ、男女差別という問題に対して生涯をかけて戦いました。きっと彼女の存在は、差別に苦しむ人々に生きる希望と勇気を与えたことでしょう。
数々の困難に屈することなく、前に進み続けた彼女を支えたものは何だったのか。その一つには、母からの教えがあったのではないかと塾長は仰いました。ギンズバーグの母は、生きていくうえで大切なことは2つあると述べました。1つ目は「自立する」こと、2つ目は「真のレディ(淑女)になる」ことです。真のレディとは、どんなに苦しいことがあろうと負のエネルギーに引っ張られず、明けない夜はないと信じて前向きに生きる人のことです。辛いことがあったとき、乗り越えることを諦めてしまうのか、その出来事の意味を見出し、それを成長の糧にするのかはその人に委ねられています。ギンズバーグは後に「全力を尽くし、それで駄目だったのなら後悔せず次に進む」という言葉を残していますが、その前向きな姿勢の根幹がここにあるように感じました。
その他にも塾長はギンズバーグの言葉をいくつかご紹介くださいました。中でも印象に残っているのは、「大切なもののために戦いなさい。ただし、周囲の人が協力してくれるような方法でおやりなさい」という言葉です。人々が今よりも暮らしやすい社会を実現するためには、法律を改正し、男女格差を是正する必要があると彼女は考えました。そして、その手段として選んだのは周囲の人々を啓蒙することでした。教え導くことは手間も時間もかかります。しかし彼女はそれが遠回りに見えても根本的な解決につながることを知っていました。このことから、私は先を見通して目的と手段を明確にすることの大切さを学びました。
最後に、ギンズバーグの他者の声に耳を傾ける姿勢について、塾長はお話をされました。自分とは全く異なる考え方を持った人のことも理解するように努めることで、今まで見えなかった世界が見えてくるというものでした。私は人間塾に入塾する前は非常に狭い視野の中で生きており、価値観が似ている人と一緒にいることに安心感を覚えていました。しかし入塾後、自分の視野が狭いと感じた時には意識的に考えを改める習慣がつき、少しずつ知らなかった世界にも目が向けられるようになりました。これからも他者の声を聞く姿勢を忘れずに、もっと自分の世界を拡げていけるよう努力したいと思います。
全5回にわたる2021年度東京講演会が幕を閉じました。先人たちから多くの学びを得て、これからは私たちが歴史を担っていく番です。どう生きていくのか。今一度自分自身に問いかけ、その答えを模索してまいりたいと思います。