講演会
【レポート】人間塾2021年度第二回東京講演会
2021年8月10日
人間塾 第9期生 猿渡啓太
(多摩美術大学3年)
去る8月1日に、東京での第2回人間塾講演会が開催されました。人間塾会場では十分に感染予防をした上で、来場者の方にお越し頂きました。第2回のテーマは「無力なものたちの力ある声〜ヴァーツラフ・ハヴェル:弱者の可能性への確信〜」です。
ヴァーツラフ・ハヴェルはチェコの元大統領で劇作家としても活躍していた人物です。塾長はまず彼の生まれ育ったチェコの歴史から解説し、次にその時代を生きたハヴェルの人生を紹介しながら、彼の活動や政治観、主体的に生きることの大切さについてお話してくださいました。
1970年代頃のチェコスロバキアはソ連の社会主義体制の中に取り込まれていました。人々は体制の掲げるイデオロギーに従い、主体性を失っていました。そんな中で「ディシデント」として、周囲からの迫害を恐れず意義の申し立てをしていたのがヴァーツラフ・ハヴェルです。彼は自分の作品を通して、体制に対する不満を表現したり、ディシデント同士で体制に反対する活動をしていたので、よく投獄されていたそうです。
私は世の中の雰囲気に流されず主体性を持って思考し、捕まってもなお行動し続けていたことは、本当に凄いことだと思いました。特に日本は和を重んじるような、事なかれ主義な部分があると思います。周囲に行動や考え方を合わせ、はみ出している人は変人扱いをされてしまいます。私も気が抜けてしまうと、自分で考えることを辞め、全体の雰囲気に流されてしまいそうになることがあります。よって、ハヴェルのように常に主体的に生き、自分の頭で物事を判断できるように気を引き締めていかなければいけないと思いました。
「ディシデント」として活動をしていくことで、国民の支持を集め、1989年にハヴェルは大統領に就任します。彼は就任挨拶でまず国民に嘘を付かないことを宣言し、約束したそうです。その後彼は、「人々が直接自分に関係ないことへの責任を共に背負い」、「共通の利益のために自分の利益を犠牲にできる」状態を理想と考え、政治手腕を奮います。
私は彼の政治観について学び、自分自身は自分に関係ないようなことにも責任を感じたり、全体の利益のために自分の利益を犠牲にできるのか、など振り返ってみました。ハヴェル自身も「私のユートピア」だと述べているように、やはり実践するのは難しいときもあります。しかし、大切なのはこのような考え方を忘れずに、いつも心掛けていることだと思いました。私も、自分の利益よりも全体の利益を大切にすることを念頭に置いて、これからも生活していこうと思いました。
最後に塾長は、「見返りのあるものだけにではなく、もっと大きな何かを求めて努力することに意味がある」と、ハヴェルは信じていたのではないかとお話ししてくださいました。
このことについて、私は人間塾も同じことを信じて活動していると思いました。このような場所で学べる機会を得たことは、大変光栄なことです。このような思いを断ち切らないように、私たち塾生も見返りのあるものだけでなく、もっと大きな何かのための努力が意味を持つのだと信じなくてはなりません。そして、私はその「大きな何か」を「社会をより良くすること」と解釈し、それを求め努力し続けたいと思います。