講演会
【レポート】人間塾2020年度第二回東京講演会
2021年2月22日
人間塾 第8期生 萩野広夢
(早稲田大学大学院修士1年)
去る2月7日、感染症対策を万全に、第2回東京講演会が開催されました。対面とオンラインを組み合わせ、30名以上の方々が参加されていました。会場には、人間塾の設立者である井上和子さんもお見えになりました。井上さんと対面でお会いすることは6月以来で、塾生一同心を躍らせていました。
今回の講演のテーマは「石橋正二郎の人生訓『世の人々の楽しみと幸福の為に』」でした。
石橋正二郎氏はブリヂストンタイヤの創業者であり、井上和子さんのお祖父様でおられます。石橋氏は家業の仕立物屋を世界に誇る大企業へと成長させただけではなく、教育やスポーツ、芸術など多種多様な分野においてその名を残す偉大な人物になりました。塾長は石橋氏の人生を紹介しながら、石橋氏の生き方の軸や陰徳の精神について、お話してくださいました。
特に印象に残っている点は、石橋氏の陰徳の精神についてのお話です。氏の言葉として「いいことをする時は黙ってやって、みんなをびっくりさせ、喜んでもらおう」というものがあるそうです。この言葉を聞いたとき、人前に立ち、目立つことを第一優先に考えて行動していた過去の自分の言動が恥ずかしく思えました。また同時に、この言葉の通り、悪目立ちするような言動は慎み、謙虚に事を為す必要があると痛感しました。また、陰徳の人でなければ、石橋氏が生き方の軸として掲げていた「世の人々の楽しみと幸福の為に」というものは成し得ないのではないかと思いました。
石橋氏の時代の一歩先を行く実践の数々は、まさに目の前の利益に驕ることなく、常に「世の人々の楽しみと幸福」を追求し続けているからこそ成し遂げられたことです。この言葉は石橋氏が久留米市に建設寄贈した「石橋文化センター」の正面玄関の壁にも刻されており、実際に久留米市を訪れた際の写真を塾長がスライド形式で紹介してくださいました。その写真の中に、石橋氏が大変好まれた「心だに 誠の道に かなひなば 祈らずとても 神や護らん」という歌を詠んだ菅原道真公所縁の太宰府天満宮もありました。
講演の最後に、井上和子さんよりお話がありました。そこでは、石橋氏の奥様の昌子さんについて、お話をしてくださいました。昌子さんは、並んだ花々を見て「植物はこれだけ多種多様なお花が支え合って美しく咲いているのに、人間はなぜできないのだろう」とおっしゃったそうです。昌子さんもまた、「世の人々の楽しみと幸福」を常々考え続けているからこそ、このような素晴らしい言葉が心に浮かんできたのではないかと思います。
自分の過去の言動を振り返ると、石橋氏のように常に「世の人々の楽しみと幸せの為」を考えて動いてはいなかったと思います。石橋正二郎氏の大切にした陰徳の精神と人々の幸せを願う心は、孫の井上和子さんに受け継がれ、私たち塾生へと惜しみなく伝承されています。そして、その思いを実践している場所こそが人間塾です。人間塾の塾生であるということを誇りに思い、石橋正二郎さんから脈々と続いているこの精神を体現し、継承していきたいと思います。