講演会
【レポート】人間塾2020年度第一回東京講演会
2020年11月21日
人間塾 第8期生 北井結夏
(津田塾大学3年)
去る11月8日に、第1回東京講演会が開催されました。万全な感染症対策を実施の上、約30名の会員の皆様と直接お会いすることができました。
講演のテーマは「この世界に人間愛を〜緒方貞子氏の人生と世界観〜」でした。
緒方貞子さんは、国際人道支援、特に難民支援という側面から世界に影響を与えた偉大な女性です。自ら難民キャンプに足を運び、現場で求められる支援を形にして多くの人々の命を救おうとしました。
世界を駆け巡り人道支援をなさった緒方さんですが、はじめから国際的な舞台で仕事をしようと目指していたわけではありませんでした。緒方さんは、聖心女子大学時代にエリザベス・ブリット学長から、「学生の志の種を見つけてそれを後押しする指導」を受けていたそうです。優れた指導者との出会い、多くの他者との交流の中で、緒方さんは「自分にできること」「自分がしなければならないこと」に全力で取り組み続けました。
このようなお話を聞いて、私も仲野塾長との対話や、他者からの言葉やアドバイスを素直に受け入れて固有の人生を歩んでいきたいと強く思いました。
次に塾長は、緒方さんの考え方についてお話してくださいました。
私たち日本人は他者と同質であることに安心感を覚えてしまう傾向があります。緒方さんはこの同質性から生じる安心感に警鐘を鳴らしています。なぜなら、同質性から生じる安心感は、他者との違いを尊重することから生み出される「学びの機会」を奪うからです。しかし、異質なものを認めることは自然にできることではなく、教育が不可欠であり、一種の訓練を経て身につけることができるのです。
異質な考え方や背景を持つ他者と意見をぶつけ合い、そのプロセスの中で自分の考えを鍛えながら学び合う教育の必要性を緒方さんは主張なさっていました。このお話を聞いて、人間塾はまさに異質なものを認め敬う力を培う場所であり、とても恵まれた環境で学んでいることを改めて実感しました。
緒方さんの人道支援活動は、既存の形に囚われずその場に必要とされるものを生み出し、変革を起こしてきました。緒方さんが何よりも大切にしていたのは、人の命です。脅威に満ちた耐えがたい状況に放置されている人々の命を救済することが彼女の目指したものでした。目の前で苦しんでいる人や困っている人に向き合い、他者の身に起きていることをいつも自分の事として捉えて考えていました。私も緒方さんのような考えを持って、これからのより良い社会の一翼を担っていきたいです。
新型コロナウイルスの蔓延は、人との繋がりや愛情の尊さを再認識させてくれました。そして、講演会での緒方貞子さんのお話を通して、他者との繋がり、そして人間として何を大切にして生きるべきなのかということを改めて考えさせられました。他人事を自分事として捉え、社会のために自分がすべきことに懸命に取り組んでいきたいと思います。