講演会

【レポート】平成28年度東京3回シリーズ講演会第一回

2016年9月16日

人間塾 第2期生 小関昭仁
(聖マリアンナ医科大学5年)

去る9月11日、仲野塾長による今年度第一回目の東京講演会が行われました。今回の講演のテーマは、『新渡戸稲造~異文化に見出す日本の心~』でした。講演では、新渡戸稲造の生涯について辿り、著書『武士道』に書かれた思想を解説、その思想から我々現代人が学ぶべきことは何かを読み解きました。

人間塾2016年第一回東京講演会:講演前の栄養補給

講演前の栄養補給

新渡戸稲造は幕末の1862年、武士の家に生まれました。新渡戸が5歳の時、時代が明治へと変わりました。武士として生きる道が断たれた世の中となったことで、元武士たちは「学問」に注力し、立身出世を目指すようになりました。しかし、漢文の素読で儒学を学ぶなど、江戸時代と同じ武士教育は続けられ、彼の思想形成にも武士教育が影響しました。新渡戸は16歳で、札幌農学校に入学し、翌年キリスト教に入信しています。札幌農学校は北海道開拓を目的に設置され、また、キリスト教に基づく教育を行っていました。新天地を開拓したいという思いと、キリスト教を背景に持つ諸外国へ飛び込んでいきたいという思いが、彼を動かしていたのでしょう。札幌農学校卒業後は、東京大学に入学しましたが、この入学試験で将来何をやりたいのか聞かれた際、有名な「太平洋の懸け橋となる」という言葉を述べました。アメリカで『武士道』を出版、国際連盟事務次長を務めるなど、彼の生涯はまさにこの言葉を体現するものでした。

新渡戸稲造が『武士道』を記したきっかけは、海外の指導者や外国人である妻から、日本人の価値観について問われた時、自身の価値観を形作ったのは武士道であると気付いたためでした。新渡戸は、武士道の神髄を別の言葉で言い表すと、ノブレス・オブリージュであると述べています。ノブレス・オブリージュとは、高貴なるものの義務という意味です。貴族、すなわち多くを与えられたものは、自らも他者や社会に対し、与え、貢献する義務を負うということです。日本と西洋の価値観をこのような形で言い表した新渡戸ならではの着眼点は、上述した彼の教育的背景があってのものでしょう。

人間塾2016年第一回東京講演会:熱弁に聞き入る

熱弁に聞き入る

ノブレス・オブリージュの実践は、私たち塾生がいつも仲野塾長から指導されている重要な価値観でもあります。塾生は、支配階級である武士や貴族ではありませんが、人間塾からの支援を含め、多くの方から期待と信頼をいただいています。多くの期待、信頼、愛を与えられた分、他の人にもこれらを与えていけるようにならなければなりません。新渡戸の思想を今一度自分自身に当てはめて考え、多くを与えられたものとして社会に貢献する意志を持って生きていきたいと強く思いました。『武士道』で述べられている武士の徳目、例えば、卑怯や不正を憎む心「義」、弱者や敗者に対する思いやり「仁」などを身につけ、命を懸けて成し遂げるべき使命に生きる武士の心意気を学び取り、ノブレス・オブリージュの実践に繋げていきたいと思います。



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