心に響く 講演・セミナー集
伝える力、伝わることば~その2~
皆さんだったら何と呼びかけるでしょうか?
この子たちは本当に賢いと思いましたよ、私は。
私のプライドをくすぐるようなことを言うんです。
それは・・・
私に向かって、「先生」って言ったんです。
もちろん、私は喜んで、「なあに?」って返事をしました(笑)
子どもたちも安心して、
「先生!見てほしい、逆上がりー」と言ってきたので、
「いいよー、見てあげるよー」と答えました。

彼らが、最初に「おじちゃん」と言ったのは、見た目で判断をした。
でも、違うって思ったとき、今度は「お兄ちゃん」と言いましたね。
それは年齢よりも上に言い過ぎたかなと思い、
ちょっと年を若くしようと考えて、お兄ちゃんと呼んだ。
つまりは、私が男性だと思って疑わなかったわけですが・・・
それでも返事をしないから、彼らは間違ったと思った。
見た目は男の人みたいな格好をしているけど、本当は女性だと思って、
性別を修正することができた。
でも年齢は修正できなかったから、
「おばちゃん」と言ってしまったわけですね。
でも、この子どもたちが賢かったのは、
「おねえちゃん」と呼ばなかったところです。
年齢ではないんだ!もっと根本的にこの人を振り向かせなくてはならない!と思って、
子どもたちは一生懸命考えたんです。
男女の性別を超えて、年齢を超えて、
幼稚園の現場で誰にでも通用する呼びかけは「先生」ですね。
そこに、この子たちは着目したのです。
これが入園して間のない4歳児たちの思考です。
これは相手の立場に立った例、そのものですね。
おじちゃんと呼んでも、お兄ちゃんと呼んでも、
おばちゃんと呼んでも、相手は返事をしてくれない。
どうしようと思ったとき、この人の立場に立って、
どう言えばこちらに振り向いてくれるか。
どう言えば相手は納得してくれるのか・・・
そうだ!「先生」という言葉だ!と考えついたわけです。
結果として大成功だった(笑)
これが4歳児たちの知恵です。
もうこの歳で共感する能力が備わっている。
相手の立場に立って物を見ることができる。
私の反応を見て自分たちの出かたを決めることができる。

4歳児たちの知恵に、思わずスゴイ!と、
拍手を送った出来事でした。
(了)