心に響く 講演・セミナー集
国境なき親子の愛~その1~
親が子どもを愛し、
大切に育てる。
子どももまた、お母さんのことが大好き。
それは、日本でもアメリカでも、
なんら変わりありません。
けれども、おもしろいのは、
お母さんと子どもとの関わり方が、
文化によって大きく違うということです。
日本の親子関係は、
運命共同体的関係です。
一方で、(ある地域の)アメリカの親子関係は、
運命共同体どころか、
「あなたはあなたの道を行く、
ママはママの道を行く」
という関係なんです。
それは子どもが3、4歳であっても、
はっきりと違いが見えました。
アメリカでの大学院生時代、
母子関係の発達に興味をもった私は、
お母さんと子どもに協力をえて、
母子関係について研究をしておりました。
特に、文化的な差ということに、
興味がありましたので、
日本でもアメリカでもビデオを回して、
数十ケースの記録を撮らせていただきました。
レゴのブロックや、ジグソーパズルなど、
子どもたちの好きな遊びの場面を設定して、
その様子をビデオで撮影したんです。
ビデオカメラは見えないように設置して、
なるべく自然のままの姿を、
撮影できるようにしました。
実は、この遊びには少し難しい箇所を用意しています。
そう簡単に、ひとりでは作れないような仕掛けをして、
必ずどこかで、「お母さん助けて!」
という声が挙がるようにしています。
そこで、「お母さん、助けて」
と子どもが言うまでは、
絶対手も、口も出さないでくださいね、
とお母さんに頼んで部屋を出るわけです。
それを忠実に守ってくれるのは、
アメリカ人のお母さんたちでした。
手も口も出しません。
椅子にリラックスして座り、
子どもに「さあ、やりなさい」と。
子どもは「ああでもない、こうでもない」と、
一生懸命に遊びを続けます。
でもやがては乗り越えられない、
難しい局面に出会います。
その場面で、子どもはいろいろとやってみるのですが、
なかなか思うようにできません。
次第にイライラしてきます。
そうすると、
「お母さん助けて」
と声をかけるわけです。
アメリカ人のお母さんたちは、
子どもに声をかけられて、
どう対処したのでしょうか。
(続きます)