心に響く 講演・セミナー集
先の見えない世界に光を!~その2~
大学のお掃除のおばさんは黒人で、私もイエローの留学生です。
やっぱり有色人種同士仲良くなるわけです。
ものすごく親切で、本当に仲良しでした。
彼女がある日、あわてて私に言うんです。
「これあなたのじゃない?ゴミ箱に捨ててあったよ」って。
私の名前の“ヨシエ”のところだけ焼け残っていました。
半分火をつけた後で、それをクシャクシャにして捨てたんでしょう。
見つけてきてもらった紙を、私は先生のとこへ持っていきました。
他の院生も真っ青でしたけどね。
盗って焼く人がいるんですね!
足掛け八年になりましたけど。私は留学してとてもよかったと思います。
嫌というほど人を引きずり下ろす、
裏切る世界を見た。
大学を卒業してすぐに、すごく純粋な思いで留学したんです。
本当に純粋培養で育ったと思います。
人を疑わないし、ちょっと声かけて親切にしてもらったら、
「この人すごくいい人!」って本当に思っていました。
それでアメリカに行って、ことごとく裏切られるんですね。
でもそれが現実でした。私が甘かったんです。
そんな甘い話ばかりじゃない、優しい人ばかりじゃない。
もちろん、そうじゃない場合もありますが、
優しく声をかけてくれても裏がある場合がある。
それを知らない、単なる世間知らずの女の子だったんです。
甘かったんです。
人種差別はもちろん、いろんな経験や問題に直面しながら、
その中でずっと学んでいくわけです。
でもありがたいことに、
だから人間嫌い!とか、ダメ!などとは思っていません。
根本的には人間が好き。
人間が持っている可能性を信じる。
皆、本質的にはいいところがたくさんあるけれど、
ある状況に置かれたら人間は変わります。
何をしでかすか分からない部分もあります。
平気で人のレポートを盗って焼いて捨てるんですからね。
それで翌日も、研究室で涼しい顔してハローと言える。
そんな人たちを見て、すごいなと思いました。
そして私も学んだんです。
人間の社会っていうのはそういうもんだと。
でも疑心暗鬼の中で、不信もあって疑惑もあって、
愛憎の葛藤で、修羅場の中で私たちは生きているんです。
今の時代は、とくに修羅場が多いですよね。
だから人間塾の設立に参加したのです。
(続きます・・・)