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塾長のそれでええやん!

連休とライフサイクル

連休はいかがお過ごしでしたか?
私は映画を2本見ました。1本目は「わが母の記」で井上靖氏の自伝的小説を映画化したもの。役所広司、樹木希林らが絶品の演技を見せ、人間の老いと死、生と葛藤、抱擁と分離などのライフサイクルの心理社会的危機を温かくも鋭い視線で描き出す秀作でした。自分の親との対峙を彷彿とさせ、自らの実年齢を認識させられました。
2本目は、「オレンジと太陽」というオーストラリアとイギリスの合作映画です。上演会場は岩波ホールでしたが、久し振りに訪れてみるとこぢんまりとしていて品の良い劇場です。一方、映画のストーリーは実話に基づく、ヒューマンドラマです。しかも、ほんの20年前まで実際に行われていた幼児の集団移送(移民)の話です。この子どもたちは、みな労働力として、あるいは大人の歓楽の対象として、不当に扱われ、人権蹂躙されていきます。イギリスからオーストラリアへ、かつての植民地政策の名残のように、幼児たちが囚われ人になっていき、その結果自分自身のアイデンティティを見失うのです。どこの誰から生まれて、何と呼ばれていたのか?はたして自分は愛されていたのか?重い内容の映画でした。
楽しかったのは、ブリジストン美術館でのひととき。「あなたに見せたい絵があります」とのテーマで、展示の工夫が素晴らしく、また創立者の石橋正二郎氏の芸術への造詣と品性溢れる趣味、またその後のキューレーターの努力などが随所に見られ、満足この上ない至福の時でした。「あーっ、もっと絵を見ていたいな」と久し振りに感じ入りました。
もう一つ楽しかったのは、新宿・サザンシアターで上演中の「川を越えて、森を抜けて」という加藤健一&竹下景子主演のお芝居でした。実は、3月末まで勤めていた大学の同僚、新進気鋭の翻訳家・平川大作氏が小田島恒志氏と共に翻訳したお芝居なのです。すでに何年も前に上演されて大好評を得たこの作品、私は初めて観ました。平川作品は全て観たい私・・・、今回も楽しみました!役者の達者な事はもちろんですが、繰り出される言葉の一つ一つが活きがいい。生きているのです。言葉と言葉の格闘技、難しい普遍的テーマをわかりやすいパンピー(一般ピープル)の言葉で客席に迫り来させるのです。私はこの芝居にも、1本目の映画と同様、人間のライフサイクルを感じました。個としてのサイクルと、人類としてのサイクル。この両方を全うすべく、私たちは自分の人生と格闘し、泣き、笑い、這いずり回って日々を生き切るのです。
あー、心豊かな連休の日々。感謝の気持ちに満たされつつ、今日、現実への復帰へリハビリ中!