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講演会

【レポート】平成28年度東京3回シリーズ講演会第三回

2017年2月9日

人間塾 第5期生 浦山宗宏
(東京医科大学2年)

暖かな日差しが降り注ぎ、遠い春の訪れを感じた1月22日、仲野塾長による今年度最後の東京講演会「向田邦子 ~日常に在る真実~」が行われました。

向田邦子は、テレビやラジオの脚本家として活躍し、直木賞を受賞するなど、向田邦子独特の文学世界を作り上げました。向田邦子作品は、日常の生活の些細なことを題材とし、家庭的な情景がまるで目の前に存在するかに思わせる描写が特徴的です。本講演では、塾長が向田邦子文学を「フォークサイコロジー」であると独自に捉え、その中でも重要な「間主観性」を切り口に、東京講演会のテーマである「共同体の中で生きる個としての人生」を紐解いていきました。

平成28年度東京講演会第3回:考えを巡らす

考えを巡らす

「間主観性」とは、主観が異なるもの同士がお互いに歩み寄れる帰着点を模索することです。そこでは社会習慣や秩序を作るエートス、つまり倫理が基礎になっています。そして「間主観性」による相互理解は、対話、つまり語り合うことによって実現されます。向田邦子は対談の名手としても知られますが、作品にもその才能が現れています。対話を通じて、互いに納得できる帰着点を探るということを向田も大事にしていました。誰もが持っている虚栄心を見抜きつつも、その見栄がはがれた時のその人のありのままの姿を温かく見つめ、それをも人間の深みとして考えているのです。

エッセイ「字のない葉書」では、罵声を飛ばし、拳骨をふるうのが日常茶飯事の父が、邦子の妹が疎開先でひもじい思いをして戻ってきた際に、裸足で玄関へ駆け出してやせた妹の肩を抱き、声を出して泣くという描写がありました。普段は肩肘を張って生きている父の別の顔を描くことで、読者の深い共感を呼び起こしています。

平成28年度東京講演会第3回:心を込めた朗読

心を込めた朗読

塾長は現代社会で最も欠けていることの一つが、間主観性であると、話を展開していきました。去る1月20日、ドナルド・トランプ新アメリカ合衆国大統領が誕生し、その排他主義的なアメリカ至上主義路線が諸外国に大きな混乱を引き起こしたことが話題になりました。今、アメリカをはじめ、EU圏内でも自国第一主義を唱える右傾化グループの台頭が目立っています。これらの国々のお互いの主張で国政が行われるのであれば、クーデンホフ・カレルギーの汎ヨーロッパ主義は崩れ、世界は再び世界大戦が行われた当時の状況に戻りかねません。個々の国がその状況を回避するためにも、相互理解・相互扶助を掲げる「間主観性」を念頭においた外交が求められていると思いました。

「間主観性」の成立は他者を必要とし、対話することで得られます。つまり、アドバイスを頂いた時にそれを受け入れるだけではなく、それに対して何らかの行動をすることが大切です。行動に移すことで、相手との関係性の模索や構築に繋がるからです。そして、その積み重ねが個人の成長の糧になります。私事になりますが、普段行っているセミナーで塾長のおっしゃることをただ頷いて聞いているだけの自分は、行動力が足りていないと痛感しました。これを機に塾長の広い胸をお借りして、様々なことを学ばせていただきたい、そう強く思えた講演会でした。