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講演会

【レポート】平成27年度第二回東京3回シリーズ講演会

2015年10月13日

人間塾 第3期生 木村優吾
(早稲田大学4年)

仲野塾長による東京講演会の第二回目が10月4日に開催されました。今講演の主題はトルストイの作品やその生涯を通した、「存在価値の原点」の追求です。

トルストイは言わずと知れたロシア文学を代表する文豪であり、代表作に『戦争と平和』、『アンナ・カレーニナ』、『復活』などがあります。彼は1828年、由緒ある貴族のもとに生まれました。若くして領地のヤースナヤ・ポリャーナを相続したトルストイは、その身分故に豊かさを享受する一方、堅実に働いても報われない農民を前に良心の呵責を感じていたそうです。貴族の特権的身分を疑う心からか、トルストイの作品の多くは貴族社会に主眼を当て、その堕落と崩壊を描いています。『復活』においては、貴族で主人公のネフリュードフが、同じ罪でも士官と平民の刑の違いに不快感を表しており、トルストイの思いを代弁しているようです。矛盾の多い社会を生きるトルストイは自分の存在意義に疑問を感じていたのではないでしょうか。自らの意義を見出そうと、トルストイは当時の社会通念からすると時期尚早にも独自の農奴解放令を敷き、領地に学校を建て、市民や農奴の教育、啓蒙活動に熱心でした。

ロシア正教や国家権力を非難し、また博愛主義者として平和を論じる活動家としての強い一面をみせる一方、放浪癖やうつ病、自殺願望からトルストイの葛藤が見受けられます。仲野塾長は、存在意義を問うトルストイのこのような言葉を引用しました。すなわち、人間の最高の任務は社会の改善にある(『神の国は汝らのうちにあり』より)という言葉です。また、なぜ人は生きるのか、どう生きればよいのか、といった問いが生じたときは、自らの思いを信じること、とトルストイは述べたそうです。トルストイの人生はこの言葉を裏付けるように、ときには向こう見ずとも言えるほど、自らの財を投げ打って農民や市民のために活動していました。他人のために尽くすことが自らの存在に価値を与えるのです。

人間塾2015年第二回東京地区講演:熱弁中の塾長

熱弁中の塾長

『人は何で生きるのか』において、人は自らの心配りではなく、他人の愛によって生かされているのだとトルストイは説きます。自立したつもりでいる私も、1日を振り返るだけでいかに誰かの世話になって生きているのかを思い知らされます。もし私が何かしらの価値を発揮することができるのであれば、それはきっと自分が頂いたと同じように、他人に対して愛を与えることにあるのかもしれません。財を溜め込んでも、トルストイが貴族に対し感じたように、空虚さしかないのかもしれません。

「言うは易し行うは難し」ですが、きっと誰しも、他人を思って行動することの喜びや、何かを独り占めすることの虚しさを感じたことがあるはずです。私にもそのような経験はあります。その感覚を忘れることなく、今後社会で働くことができればきっと幸せになれるとどこか確信しています。遠いロシアの文豪に思いを馳せながら、身近に迫ってきた今後の仕事に期待に思いを巡らす講演会でした。